2004 Fiscal Year Annual Research Report
同時計測法で探る分子2価イオン状態の解離ダイナミクス
Project/Area Number |
16750019
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
彦坂 泰正 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助手 (00373192)
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Keywords | 同時計測 / 2価イオン状態 / 解離ダイナミクス / しきい電子 / 画像法 / ポテンシャルエネルギー曲面 / 2重イオン化 / イオン分光 |
Research Abstract |
中性の原子や分子から電子2個を取り去った2価イオンは、低温プラズマや上層大気、宇宙空間媒体等の重要な構成要素と考えられる。そのため、2価イオン状態の分光情報やその安定性について基礎的データは、これらの系の物理の本質的理解のために重要である。また、分子の2価イオン状態は、特異なポテンシャルエネルギー曲面を有するので、分子科学的にも極めて興味深い研究対象である。本研究の最終目標は、1)分子の価電子2重イオン化で生成する2つの電子を高いエネルギー分解能で同時に捉えることにより、分子の2価イオン状態を出来るだけ正確に規定し、2)その電子状態からの解離によって放出されるフラグメントイオン対の運動量を各々画像観測し、3)これらを同時計測することにより2価イオン状態の解離ダイナミクスを詳細に検討する、というものである。本年度は先ず、コンピュターシミュレーションにより、しきい電子分析器及び飛行時間型分析器の静電レンズ系の設計を行った。そのシミュレーションに基づき同時計測装置を製作し、この性能評価を放射光施設UVSORのビームラインBL4Bで行なった。Heのイオン化閾値直上において生成するしきい電子を観測することにより、製作したしきい電子分析器のエネルギー分解能を見積もったところ、期待していたエネルギー分解能(20meV)を達成することが確認できた。画像観測用の飛行時間型分析器の評価は、N2分子の内殻イオン化によって生成するN+フラグメント対の観測によって行なった。しかし、こちらは未だ十分な運動量分解能が達成されていない。これは、ガス導入用のノズルによって、イオン化領域の電場が乱されていることによると判明した。指向性の高いガスビームを供給できるノズルを製作し、十分な運動量分解能が得られるよう改良する予定である。
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