2005 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素橋頭位化合物の構造特性を活用した新規導電性高分子の開発に関する基礎研究
Project/Area Number |
16750026
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
幡野 健 埼玉大学, 工学部, 講師 (40332316)
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Keywords | ケイ素橋頭位化合物 / 分子軌道計算 / 電子構造 / ジシラビシクロ-[2.2.2]-オクタン / トリアニオン / 導電性高分子 |
Research Abstract |
それぞれ構造が異なる三種のケイ素橋頭位化合物として、ジシラビシクロ-[2.2.2]-オクタン、ジシラバレレン、ジシラトリプチセンについて、分子軌道計算を用いてその橋頭位ケイ素間の距離を予想した。その結果、ジシラビシクロ-[2.2.2]-オクタンにおいて、その距離が最も短く、橋頭位ケイ素間での空間を介した電気的な相互作用が最も期待された。そこで、本年度はジシラビシクロ-[2.2.2]-オクタンの合成経路の確立を目的に研究を行った。 ジシラビシクロ-[2.2.2]-オクタンの合成方法としてはいくつか考えられるが、今回我々はトリ(2-リチオエチル)シラン類とトリクロロシラン類との環化反応により合成する経路の検討を行った。フェニルトリクロロシランとビニルグリニャール試薬との反応により、まずフェニルトリビニルシランを高収率で得ることができた。次に、末端オレフィンの官能基化を試みた。まず、得られたフェニルトリビニルシランのオレフィンに対し、末端選択的なハイドロボレーション反応を行った。オレフィンに対し末端選択的にハイドロシリル化反応することが知られているジシクロヘキシルボランを用いてハイドロボレーション反応を試みた。しかしこの場合には、末端選択性はさほど良いものではないことが、その後の反応性生物の解析により分かった。そこで、更なる末端選択性の向上を期待して、より嵩高いヒドロボラン試薬であるイソピノカンフェニルボラン(Ipc_2BH)を用いて同様の反応を行った。その結果、末端選択的にハイドロボレーションしていることが、その次の加水分解性生物の解析により分かった。次に、加水分解性生物であるトリ(2-ヒドロオキシエチル)フェニルシランのメシルクロライドによるメシル化、臭化ナトリウムによる臭素化を行い前駆体であるトリ(2-ブロモエチル)フェニルシランを良好な収率で得ることに成功した。続いて、この末端臭素体のリチオ化を-78℃においてリチウムナフタレニドを用いて行った。この反応条件におけるトリアニオンの発生の確認は、トリメチルクロロシランによる補則実験で行った。そこで、実際にこのトリアニオンとトリクロロシランとの反応により、目的とするジシラビシクロ-[2.2.2]-オクタン誘導体の合成を試みた。その結果、目的物は少量ではあるが生成していることが、質量分析、および核磁気共鳴スペクトルの解析の結果分かった。現在までのところ、低収率であるため他の副生成物との分離生成には至っていないが、今後反応条件の再検討を行う予定である。
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