2005 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族および15族元素を含む新規な拡張π電子系の創製とその性質の解明
Project/Area Number |
16750033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 助手 (70362390)
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Keywords | 高周期15族元素 / 立体保護 / ジホスフェン / フェロセン / フェロセニルジホスフェン / サイクリックボルタンメトリー |
Research Abstract |
本研究は、新規な含高周期14族および15族元素拡張π電子系の構築とその物性解明を目的としている。本年度は、昨年度合成に成功したフェロセニルジホスフェンTbtP=PFc(Tbt=2,4,6-[CH(SiMe_3)_2]_3-C_6H_2,Fc=ferrocenyl)のさらなるπ電子拡張を目的とし、フェロセンの二つのCp環にP=Pユニットを組み込んだ、1,1'-ビス(ジホスフェニル)フェロセンの合成を検討した。その結果、初めての安定な1,1'-ビス(ジホスフェニル)フェロセンである(ArP=PC_5H_4)_2Fe(1:Ar=Tbt 2:Ar=Bbt, Bbt=2,6-[CH(SiMe_3)_2]_2-4-[C(SiMe_3)_3]-C_6H_2)の合成に成功し、その構造・物性を解明した。特にUV/visスペクトルにおいて、フェロセニル基のFe部位とP=P二重結合部位のMLCTに相当するバンドが観測されたことは興味深い。またサイクリックボルタンメトリーにより、1および2の酸化還元挙動を解明した。1および2は、ジホスフェン部位の還元に由来すると考えられる領域に、それぞれ二つの可逆な一電子酸化還元波が観測され(1:-1.84,-2.89V,2:1.78,2.13V vs Ag/Ag^+)、分子内の二つのP=Pユニット間に電子的な相関が存在することが支持された。本研究において、高周期15族元素π電子系をフェロセンに組み込んだd-π電子共役系である1,1'-ビス(ジホスフェニル)フェロセンを初めて安定な化合物として合成・単離することに成功し、二つのP=Pπ電子系のフェロセンd電子を介した電子相関が存在することを明らかにした。今後、新規物性の発現を目的とし、さらに高周期の元素を含むπ電子拡張共役系の構築を検討する。
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Research Products
(18 results)