2006 Fiscal Year Annual Research Report
光応答部位および基質活部位を有する新規多核錯体の合成と反応開発
Project/Area Number |
16750046
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高尾 昭子 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (00345357)
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Keywords | 光応答性 / ルテニウム / 錯体 / ルテニウムトリスビピリジル |
Research Abstract |
前年度までに、すでに光応答性部位としてルテニウム(II)トリスビピリジル誘導体を有し、反応サイト(M)としてRu, Rh, lr, Pdを含むRu_…M二核錯体{(bpy)_2Ru(BL)ML}^<n+>(BL=2,2'-bipyrimidyne,2,3-bis(2-pyridylpyrazine)を合成し、その同定に成功している。今年度は主に、紫外光を吸収しうる原子団である多環式芳香族化合物である、ピレン、ナフタレンをビピリジン上に有する錯体の合成とその多核化を検討した。 ピレンおよびナフタレンを有する2,2'一ビピリジン配位子を合成し、cis-(chr-bpy)_2RuCl_2(chr=chromophore : pyrene, naphtharene)を合成した後に2,2'-ビピリミジン(bpm)と作用させることにより、1分子中にクロモフォアを2つ持つ単核ルテニウム錯体[(chr-bpy)_2Ru(bpm)](PF_6)_2を合成することに成功した。ピレンを持つ単核ルテニウム錯体については、さらに、シクロオクタジエンを配位子として持っパラジウム錯体と作用させることにより、パラジウムユニットを導入したRu-Pd二核錯体の合成に成功した。対応するナフタレンをもつ単核錯体も同様に試みたが、現段階では二核錯体の単離にはいたっていない。 合成した一連の錯体の物性を調査したところ、ナフタレンを有する錯体については、ナフタレンユニットからルテニウム中心へのエネルギー移動効率が高いことが明らかとなった。ナフタレンの吸収波長で励起しても、ナフタレンの発光は一切観測されず、ルテニウムからの発光のみが観測された。ナフタレンよりは効率が劣るものの、ピレンをクロモフォアとして有する錯体についてもクロモフォアからのエネルギー移動が観測された。紫外光の利用には、1.クロモフォアからルテニウムユニットへ、2.ルテニウムユニットからパラジウムユニットへの2段階のエネルギー移動が必須となるが、そのうち、いずれのクロモフォアを用いても、1のエネルギー移動が観測されている。今後は2段階目のエネルギー移動効率を高めるため、ナフタレンを含む2核錯体の合成と、架橋配位子部の修飾を行う予定である。
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