2004 Fiscal Year Annual Research Report
第一遷移金属‐希土類金属系多核金属錯体に基づく単一分子磁石の創製
Project/Area Number |
16750050
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
砂月 幸成 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助手 (80362987)
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Keywords | 希土類 / 第一遷移金属 / 多核錯体 / 結晶構造 / 磁性 / 単一分子磁石 |
Research Abstract |
近年、単一分子磁石と呼ばれる化合物が非常に注目を集めているが、これらのほとんどは第一遷移金属イオン(3d金属イオン)のクラスター化合物である。そこで我々は希土類金属イオン(4f金属イオン)に注目した。新奇3d-4f単一分子磁石の合成を目的として、N_3O_3タイプの三脚型Schiff塩基配位子1,1,1-tris(N-salicylideneaminomethyl)ethane(H_3L)のNi(II)単核錯体を錯体配位子として希土類金属イオンに配位させることで、一連のNi(II)-Ln(III)型多核錯体(Ln=Eu, Gd, Tb, Dy)を合成した。4f金属イオンの配位数を満足させるために用いた陰イオン性共存配位子の嵩だかさや架橋能の有無を考慮に入れることで、二核、三核、四核と核数の異なる錯体を系統的に作り分けることに成功した。全ての化合物の構造はX線結晶構造解析により決定した。四核錯体ではLnのイオン半径の違いによって架橋構造が異なり、最もイオン半径の小さいLn=Dyのものは架橋が完全に切れて二核構造となっていることを明らかにした。さらに磁気的性質の比較検討のために、Ni(II)を反磁性のZn(II)に置き換えたZn(II)-Ln(III)型の対応する二核、ならびに四核錯体も合成し、構造決定を行った。合成した全てのNi(II)-Ln(III)、並びにZn(II)-Ln(III)錯体について種々の磁気的測定を行い、中でも理論的な取り扱いが容易なNi(II)-Gd(III)錯体では、Ni(II)とGd(III)の間に強磁性的な相互作用が働いていることを明らかにした。さらに、Ni(II)-Dy(III)二核錯体は単一分子磁石の特徴のひとつである交流磁化率の周波数依存性を示した。現在これらの磁性の詳細な理論的解釈を、共同研究者に依頼しているところである。
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