2004 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化孤立ナノ空間を利用した新反応・新現象の創出
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16750071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉沢 道人 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (70372399)
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Keywords | 水素結合 / かご状錯体 / 水 |
Research Abstract |
水は単純な分子構造でありながら、水素結合に起因する特異な物性を有するため化学反応や生命現象において重要な役割を担っている。水の最も特徴的な性質の一つは、疎水性基質の表面で水素結合ネットワークを発達させ、水分子の高い極性を中和しながら自らが"疎水的"になることである。このようなネットワークの形成により、メタンハイドレートのような安定な水-有機物複合体ができることも知られている。本研究では水素結合ネットワークが疎水的な分子の内面でも形成するものと考え、かご状錯体1の大きな内部空孔における水クラスターの生成を調べた。錯体1を水から再結晶し、結晶構造解析したところ、内部には水10分子が規則正しく配列し、アダマンタン型のクラスターを形成していることがわかった(1⊃(H_2O)_<10>)。一方、錯体外部にも多くの水分子が観測されたが、それらはランダムであった。この水10分子クラスターは、天然に存在するI_c型の氷結晶構造の最小単位であることから、「1分子の氷(モレキュラーアイス)」とみなすことができる。O-O-O角を比較すると、この水クラスターは錯体骨格によりわずかに圧縮されていることがわかった。D_2Oを用いた中性子回折実験から、橋頭位重水分子の重水素原子は、アダマンタン骨格の形成に使われており、橋頭位重水分子とこれに接している配位子(トリアジン環)との間には水素結合は存在しなかった。配位子が3カ所でPd(II)イオンに配位していることから、中央のトリアジン環は極端な電子不足であり、水の孤立電子対から負電荷が供給されることが強く支持された。すなわち、良く知られる"カチオン-π型"の相互作用とは逆の電子供与によりクラスターが安定化していると考えられる。人工的につくられた「逆ハイドレート」構造である。
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Research Products
(6 results)