2004 Fiscal Year Annual Research Report
一級アミノ配位子を有する遷移金属錯体触媒による生理活性物質の高効率合成
Project/Area Number |
16750073
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 正人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (20293037)
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Keywords | パロキセチン / リグナン / ムスコン / ルテニウム / PN配位子 / 不斉水素化分解反応 / 不斉異性化反応 / 酸化的ラクトン化反応 |
Research Abstract |
三級ホスフィンー一級アミンキレート配位子(PN配位子)を有するペンタメチルシクロペンタジエニルルテニウム錯体触媒の高極性官能基の水素化分解能力を利用することにより、3-アリールグルタルイミド類のエナンチオ選択的水素化分解を達成した。原料のグルタルイミド類は安価なグルタコン酸より容易に調製でき、また得られる光学活性ヒドロキシアミドは短行程で光学活性ピペリジン誘導体に導くことができるため、本反応は新たな触媒的不斉合成法として有用である。実際、この方法を用いることで抗うつ剤(-)-パロキセチンの効率的合成法を開発した。また同様の錯体触媒がアセトンを酸化剤とするジオール類の酸化的ラクトン化反応に極めて有効であることを利用し、イタコン酸類から容易に調製される2位にアリールメチル基を有する1,4-ジオール類を抗腫瘍性リグナン類の合成中間体であるβ-アリールメチル-γ-ブチロラクトンに高レジオ選択的に変換することに成功した。さらに同様の触媒によるアリルアルコール類の分子内水素移動による飽和カルボニル化合物への異性化反応についてはプロキラルオレフィンを有するラセミ体のアリルアルコールの動的速度論的分割を伴う新規不斉異性化反応を開発し、これを鍵段階とする(R)-ムスコンの短段階合成法を確立した。これらの反応におけるエナンチオ選択性やレジオ選択性の発現はいずれもPN配位子のキレート骨格の立体効果に起因するものであり、より高い選択性を実現するためのPN配位子の分子デザインの指針を得ている。
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