2004 Fiscal Year Annual Research Report
縮合多環式芳香族化合物の簡便合成法の確立と新規有機EL発光材料開発への応用
Project/Area Number |
16750075
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
土本 晃久 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (80313716)
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Keywords | インジウム / ルイス酸 / アルキン / 環形成反応 / 有機EL発光材料 / 付加反応 / 置換反応 / カルバゾール |
Research Abstract |
申請時における本研究の第一の目的は、チオフェンに代表される、芳香族複素環化合物を基本骨格とする縮合多環式芳香族化合物の簡便かつ実用的な合成法を確立することであった。また、生成物の発光特性について評価し、優れた有機EL発光材料を開発することを第二の目的とした。今年度は当初の研究計画に従い、本研究の第一の目的である、縮合多環式芳香族化合物の新規簡便合成法の確立に焦点を当てて研究を進めた。まず、4,4',5,5'-テトラメチル-2,2'-ビチオフェン(1a)とメチルプロパルギルエーテル(2a)の基質の組み合わせの反応において、ルイス酸触媒や溶媒の効果に加え、反応温度、基質の量比などが目的生成物の収率に与える影響を詳細に調べたところ、インジウムノナフルオロブタンスルホナート[In(ONf)_3,30mol%]をルイス酸触媒として利用し、ジブチルエーテル中1aと2aを1対1.1の比率で90℃、2時間反応させることで目的とするベンゾジチオフェン誘導体が収率40%で得られることを見つけた。この反応条件を基に、2aに対する基質の適用範囲を調べたところ、ビチオフェン誘導体以外にはビフランやビピロールが利用可能である他、Fischerインドール合成によって簡便に合成できる様々な2-アリールインドールや2-ヘテロアリールインドールも2aと反応させることができることを明らかにした。インドール誘導体の反応では、これまで基質一般性に優れた簡便合成法がなかった様々なアリール及びヘテロアリール縮環型カルバゾール誘導体を一挙に合成できる点で極めて有用であり、収率も良好である。結果の一部については国際誌として評価の高いAngew.Chem.Int.Ed.に速報誌として投稿し、受理された。得られた化合物のいくつかについてはUV吸収スペクトルや蛍光スペクトルの測定の他、蛍光量子収率についても求めることで発光特性について既に評価しているが、現在のところ、その多くは紫色から青色の発光色を示し、中でも5-メチル-12H-ベンゾフロ[2,3-a]カルバゾールの蛍光量子収率は0.85と高い。今後は、広い基質一般性を有する本反応の特徴を生かして、置換基や、芳香環あるいは芳香族複素環の縮環様式及び縮環位置が発光特性に与える影響を詳細に検討することで、優れた発光特性を持つ有機EL発光材料の開発に焦点を当てて研究を進めて行く予定である。
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