2004 Fiscal Year Annual Research Report
超分子ポルフィリン誘導体を用いた外部シグナル応答型電子移動システムの構築
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16750076
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
新森 英之 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 講師 (40311740)
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Keywords | 光エネルギー / ポルフィリン / 励起エネルギー移動 / 超分子組織体 / 一重項酸素 |
Research Abstract |
外部シグナルとしてクリーンなエネルギーである光を用い、生体機能と密接に関連する生理活性物質の電子・エネルギー移動による構築に関して検討した。ここでは植物の光合成に習い、ポルフィリン類を光吸収物質として利用した。これは光合成中心に存在するクロロフィルと同じ骨格を有するために高効率化を実現できると期待したことが大きな理由である。 実際に様々な新規ポルフィリン誘導体(ポルフィリン異性体や多量体等)を合成化学的手法を用いて、創出し、これらに光、特に可視光を照射した。その結果、光エネルギーが新規ポルフィリン誘導体を経由して周りに存在している酸素に伝達され、反応性の高い活性酸素種のひとつである一重項酸素を効率よく生産することに成功した。この励起エネルギー移動によって産出された一重項酸素は細胞に対する毒性が指摘されており、癌細胞の壊死やウイルス・細菌の死滅を行うことによる新たな疾患治療法として医学薬学分野で注目されている。ここでは低エネルギー光を利用した一重項酸素の発生効率はポルフィリン骨格にヘテロ原子を導入することで増大することを証明した。 さらに今回は一重項酸素の発生を有機物の添加で調整することを挑戦し、用いたポルフィリン誘導体の三次元立体構造のナノレベルでの変化が関連していることを明らかにした。一重項酸素発生の制御機構にはポルフィリン多量体において中心金属へ配位が可能なゲスト分子を相互作用させ、超分子組織体を構築させることを利用した。実際に直結型ポルフィリン多量体に多座配位性アミン類を添加して、中心亜鉛への協同的配位に伴うポルフィリン環の二面角を変化によって、一重項酸素の発生能は上昇することを確認した。このような一重項酸素発生能のコントロールはこれまで報告例が少なく、これは学術的に大きな意味を持った化学と医学との融合領域の研究のひとつとなり得る。
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