2005 Fiscal Year Annual Research Report
超分子ポルフィリン誘導体を用いた外部シグナル応答型電子移動システムの構築
Project/Area Number |
16750076
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
新森 英之 神戸大学, 大学院自然科学研究科, 助教授 (40311740)
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Keywords | ポルフィリン / 一重項酸素 / 超分子組織化 / 光線力学的療法 / 癌細胞 |
Research Abstract |
光を外部刺激として利用し、超分子型光増感剤を用いた電子・エネルギー移動により一重項酸素を発生させることでの生体機能システムに対する影響を検討した。ここでは、植物の光合成に習い、ポルフィリン類を光増感剤として選択した。ポルフィリン類は電子・エネルギー移動を伴う一重項酸素発生には有効であると期待される。また一重項酸素は、近年、生体系への大きな障害から興味が持たれている。 生体内で光を活用する場合、組織透過性の観点から、長波長可視光領域の光が有効であることが知られており、今回はまず、長波長光を吸収するポルフィリン誘導体の設計と合成を行った。実際に、ポルフィリン骨格に2個の窒素原子を導入したジアザポルフィリン誘導体を合成し、その光特性を測定したところ、600nm付近に効率的な吸収帯をもつことを確認した。そこで、このジアザポルフィリン誘導体を用いて可視光照射による一重項酸素発生能を検討した結果、一重項酸素発生に関する量子収率が約0.9となり、高効率な一重項酸素発生能を示すことを実証した。 次に、実際の生体系への影響を調査するために細胞系実験を行った。光増感効果が癌治療のひとつである光線力学的療法に利用されていることから、癌細胞の壊死化を超分子型ポルフィリン誘導体への光照射によって観測した。カチオン性ポルフィリンを癌細胞と共存させた状態で可視光照射を行うと、ほとんどの癌細胞が死滅することが確認された。ここで、カチオン性ポルフィリン存在下で静電的相互作用によって超分子組織化が可能なアニオン性ポルフィリンを徐々に添加すると、細胞毒性の減少がみられた。これは光増感剤の超分子組織化平衡によって一重項酸素発生能が制御され、細胞に対する影響がコントロールできることを意味する。この制御可能な光増感効果は報告例がなく、光線力学的療法による癌治療後の正常細胞に対する毒性の消去という面で非常に興味深い。
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