Research Abstract |
我々は,鎖末端に複数のパーフルオロアルキル基(Rf基)を有する一次構造の制御されたポリスチレンを合成し,それらのフィルム表面構造解析の結果より,Rf基の表面濃縮挙動がポリマー主鎖の分子量やRf基の導入位置,導入数に依存することを明らかにしてきた.本研究では,Rf基数をこれまでの2,4個から8,16,32個へと増加させ,Rf基の表面濃縮挙動について詳細に検討した.まず,我々が開発した手法により,鎖末端に2,4,8,16個のtert-ブチルジメチルシリロキシメチルフェニル(-PhCH_2OSiMe_2Bu^t)基を有する一次構造の明確なポリスチレンを合成した.-PhCH_2OSiMe_2Bu^t基は,Bu_4NFを用いることで容易に,ヒドロキシメチルフェニル(-PhCH_2OH)基へと変換される.さらに,-PhCH_2OH基とC_8F_<17>COClとの定量的な反応によって,目的とする鎖末端に2,4,8,16,32個の-PhCH_2OC(O)C_8F_<17>基を有する構造の明確なポリスチレンの合成を行った.いずれの場合も,得られた多官能基化ポリマーの収率は定量的であり,目的とする個数の官能基が定量的に導入され,狭い分子量分布と計算通りの分子量を有している.これらの結果は,本合成法が極めて優れた多官能基化ポリマーの合成法であることを示している.このようにして得られたC_8F_<17>基化ポリスチレンは,C_8F_<17>基の導入位置や個数が正確にわかっており,また分子量や分布が厳密に制御されているため,ポリマーの分子量や導入したC_8F_<17>基の位置や個数が,フィル表面近傍,数Åにどの程度のC_8F_<17>基が濃縮するのか,またフィルム最表面の高次構造形成に与える影響を明らかにするには最適のポリマーと考えられる.これらのポリマーフィルムの表面構造を検討するため,接触角,およびX-ray Photoelectron Spectroscopy測定行った結果,C_8F_<17>基化ポリマーよりキャストしたフィルムは,いずれもC_8F_<17>基の大きな表面濃縮能力による高撥水・撥油性が観察された.そしてC_8F_<17>基の濃縮度合いは,ポリマー鎖中に導入されたC_8F_<17>基の個数や位置によって大きく影響することと表面を完全に覆う導入個数が,初めて系統的かつ定量的に示された.
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