2004 Fiscal Year Annual Research Report
誘起らせん高分子を用いた高効率高分子不斉触媒の開発と応用
Project/Area Number |
16750093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前田 勝浩 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 講師 (90303669)
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Keywords | らせん構造 / 誘起円二色性 / 誘起らせん / キラリティー / ポリフェニルアセチレン / コンホメーション / 光学活性 / ヘリックス-ヘリックス転移 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、酸-塩基相互作用など光学活性体とのキラルな非共有結合的相互作用を利用することにより、光学不活性な高分子に望みの向きのらせんを自在に誘起でき、さらに誘起されたらせん構造が、光学不活性な化合物で置換後もそのキラリティーを記憶として保持できることを見いだしている。本研究では、申請者らが開発した独自の概念である「高分子へのらせん誘起と記憶」の不斉合成反応への応用および外部刺激に応答して主鎖のらせんが反転する高分子を不斉触媒に利用した選択性の自在制御が可能な高効率高分子不斉触媒の開発を目指し、今年度は以下に示す結果を得た。 1.カルボキシル基やホスホン酸残基よりも酸性度の高い、スルホン酸残基を側鎖に導入した、立体規則性(シス-トランソイド構造)のポリフェニルアセチレン誘導体を、対応するモノマーを水溶性のロジウム錯体を触媒に用いて、塩基存在下、水中で直接重合することにより、高収率で合成することに成功した。得られたポリマーが、光学活性アミン存在下、DMSO中で一方向巻きに片寄ったらせん構造を形成し、長波長領域に誘起円二色性を示すことを見い出した。また、カルボキシル基やホスホン酸残基を有するポリアセチレン誘導体とは異なり、酸性度の高いスルホン酸残基を導入したポリマーの主鎖に効率良くらせん構造を誘起するには、対応する光学活性体の塩を加えることにより、側鎖のイオンペア錯体のフリーイオンへの解離を抑えることが重要であることを明らかにした。さらに、誘起されたらせん構造が光学活性アミンをアキラルなジアミンで置換することにより記憶できることを見い出した。 2.溶媒の種類に応答してらせん-ランダムコイル転移を起こすことが知られているポリ(γ-ベンジルL-グルタメート)(PBLG)鎖を側鎖に導入したシス-トランソイド構造の新規ポリフェニルアセチレン誘導体を合成することに成功した。得られたポリマーが、溶液中で一方向巻きに片寄ったらせん構造を形成し、長波長領域に誘起円二色性を示すことを見い出した。さらに、溶媒の種類を変えることにより、側鎖のPBLG鎖がらせん-ランダムコイル転移を起こし、その変化に応答して、ポリアセチレン主鎖がヘリックス-ヘリックス転移を起こすことを見い出した。
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