2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子内π-π相互作用を活用した新規機能性高分子材料の創製
Project/Area Number |
16750096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森崎 泰弘 京都大学, 工学研究科, 助手 (60332730)
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Keywords | [2.2]パラシクロファン / キサンテン / ベンゼン環積層高分子 / π-π相互作用 |
Research Abstract |
本年度は「完全にπ-π相互作用のみで共役長が拡張する高分子を合成すること」を目的の一つとして、キサンテン骨格に[2.2]パラシクロファンを導入した「ベンゼン環積層高分子」の合成を行った(Morisaki, Y.; Chujo, Y.Tetrahedron Lett.2005,in press.)。その結果、数平均分子量9000に相当するベンゼン環積層高分子を高収率で得ることに成功した。得られたポリマーはベンゼン環が30枚縦に積層する全く新しいタイプの高分子である。ポリマーの分子量はモノマーの仕込み比を変えることにより制御可能であることも明らかにした。本ベンゼン環積層高分子は末端の修飾が容易であることから、両末端をフェロセンで置換することにより、その酸化還元特性を詳細に評価した。その結果、本ベンゼン環積層高分子は溶液中ならびに固体状態において、両末端のフェロセンが30枚のベンゼン環を介して相互作用していないことが明らかになった。また、ポリマーの構造を^1HNMR測定により解析したところ、本ベンゼン環積層高分子のシクロファン骨格のブリッジメチレンプロトンが非常に幅広く現れ、かつ高磁場シフトしていることが明らかになった。これは[2.2]パラシクロファンのブリッジメチレンプロトンが隣のシクロファンのベンゼン環の環電流効果を受けていることを意味している。すなわち、キサンテン骨格に固定された隣り合う[2.2]パラシクロファンは比較的自由に回転しており、これらの間に効果的なπ-π相互作用は働いていないことが示唆された。以上の考察により、完全にπ-π相互作用のみで共役長が拡張したベンゼン環積層高分子を合成するためには、ビフェニレンもしくはナフタレン骨格に[2.2]パラシクロファンを固定させる分子設計が必要であることが明らかになった。
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