2004 Fiscal Year Annual Research Report
長距離電子移動を可能とするヘリックスペプチドシステムの創成
Project/Area Number |
16750098
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森田 智行 京都大学, 工学研究科, 助手 (20335194)
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Keywords | ヘリックスペプチド / 自己組織化膜 / フェロセン / 電子移動 / ホッピング機構 |
Research Abstract |
末端にジスルフィド基あるいはアセチルチオフェニル基、もう一方の末端にレドックス活性なフェロセン部位を有するアラニンとαアミノイソ酪酸との交互配列18量体ペプチドを液相法により合成した。また、側鎖に二つのピレニル基を導入した化合物も合成した。これらのヘリックスペプチドのエタノール溶液に金基板を浸漬し、それぞれの自己組織化膜を調製した。赤外反射吸収スペクトル測定の結果、ピレニル基を含む膜以外は、垂直に近い分子配であることがわかった。過塩素酸水溶液中でサイクリックボルタンメトリーを行ったところ、フェロセン部位の可逆的な酸化還元ピークが観察され、ヘリックスペプチドを介した長距離電子移動が起こることがわかった。電子移動速度定数はクロノアンペロメトリーから求めた。電子移動速度定数の電位依存性が非常に弱かったことから、この系での長距離電子移動は通常のトンネリングではなく、アミド基をホッピングサイトとしたホッピング過程により起こっていることがわかった。リンカー部位をジスルフィド基からアセチルチオフェニル基に変えると、電子移動が5倍程度加速されたが、ペプチドダイポールモーメントの方向の違いによる速度定数の変化はほとんどなかったことから、電子移動の律速段階は、ペプチドのアミド基間のホッピング過程ではなく、末端アミドから金表面への電子移動であることがわかった。また側鎖に導入したピレニル基による電子移動の加速効果は認められなかった。以上の結果から、規則正しく配列したアミド基間のホッピングが長距離電子移動を可能にしていること、ペプチドと金とのリンカーを改良することによって、長距離電子移動の速度を加速させることができること、が示唆された。
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