2005 Fiscal Year Annual Research Report
セレン原子を含む新規単一成分分子磁性伝導体に関する合成および物性研究
Project/Area Number |
16750112
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 絵美子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (30361562)
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Keywords | ニッケル錯体 / セレン原子 / STF骨格 / ジチオラト配位子 / 結晶構造 / 伝導性 / 磁性 / モノアニオン錯体 |
Research Abstract |
単一成分金属[Ni(dmdt)_2]に対してSe原子を導入した[Ni(dmstfdt)_2]の開発を試みた。目的の錯体を作製する過程で、組成比が1:1の比較的良伝導性のテトラブチルアンモニウム塩が得られた。構造解析の結果、嵩高なカチオンの層とアニオン層が交互に積層した構造である事が判った。この錯体ではアニオン層内のみにSやSe原子を介した多くの接触がみられ、二次元のカルコゲン接触網が形成されている。四端子法で単結晶試料の電気抵抗の温度依存性を調べた。この錯体は嵩高なカチオンを含むモノアニオン錯体であるが、比較的高い室温伝導度(σ_<300K>=0.14S・cm^<-1>)を示した。抵抗の温度依存性は300-340Kの範囲では(半)金属的であり、試料を冷却すると絶縁化が生ずる147K付近まで非常に緩やかな抵抗増加(E_<a 150-270K>=17meV)を示した。多結晶試料のFC磁化率(10kOe)は試料を冷却すると次第に増加し、150Kと30K付近に磁気的な異常を示した。_XT-Tプロットからは次第に電荷が局在していく様子がみられ、150K付近において完全な電荷の局在を起こし、結果的に絶縁化が生じていることが推測された。2Kにおいてこの錯体の磁化を測定したところ、保持力が1.5kOe、残留磁化が30emu・Oe・mol^<-1>のヒステリシスループが描かれ、この錯体がキャントスピン磁性体であることが示唆された。また、磁気異方性を考慮して、残留磁化の値からキャント角を計算すると1度程度となった。さらに、ZFC磁化率の極大部、残留磁化が消える温度から転移点は約7Kであることが分かった。FC磁化率の低温度の立ち上がりは磁場が大きくなると次第に抑制され、10kOeでほとんどみえなくなり、30kOeで完全に抑えられた。室温の構造を基に拡張Huckel法により計算したMOは、通常のTTF型ジチオレン金属錯体と同様のHOMO, LUMOの対称性を持ち、HOMO-LUMO GapはアニオンAで0.203、アニオンBで0.163eVと小さな値を示した。バンド計算からは電子と空孔の小さな三次元フェルミ面が与えられ、(半)金属的な伝導挙動を支持する結果が得られた。
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Research Products
(6 results)