2005 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡を用いた相互作用測定に基づくポリエステル分解酵素吸着機構の解明
Project/Area Number |
16750136
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤田 雅弘 独立行政法人理化学研究所, 高分子化学研究室, 研究員 (50342845)
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Keywords | PHB分解酵素 / 原子間力顕微鏡 / 生分解性高分子 / 相互作用 / 吸着力 |
Research Abstract |
本年度は、R.pickettii T1由来のPHB分解酵素の基質吸着部位とバイオポリエステル表面との間に働く相互作用力をAFM法により測定・解析すること、ならびに吸着特性の解明を行った。昨年度と同様、基質吸着部位のN末端に6個のHis残基を付加させたHis-tag基質吸着部位を用いた。このタンパク質を、ニトリロ三酢酸(NTA)基を末端に有する化合物を介して、AFM探針表面に固定化した。代表的なバイオポリエステルであるポリヒドロキシブタン酸(PHB)およびポリ(L-乳酸)(PLLA)表面に対するフォースカーブ測定を多数回(200回以上)行った。また、測定系中に、塩や界面活性剤等を投入し、吸着特性に及ぼす影響を調べた。一方で、バイオポリエステル以外の合成高分子材料に対するフォースカーブ測定も行った。 PHBやPLLA表面に対するフォースカーブ中には複数の極小が認められるが、このことは、多数のタンパク質分子が材料表面への吸着に関与していることを意味するものである。これらの極小値を解析することにより、バイオポリエステル(PHBやPLLA)表面に対するPHB分解酵素一分子の相互作用力を見積もったところ、ともにおよそ100pNであった。この値から、基質吸着部位中の複数のアミノ酸残基が吸着反応に関与しているものと推測された。非特異的吸着を低減させる作用のある界面活性剤存在下で同様の測定を行うと、吸着力や吸着頻度の極端な減少は認められなかった。一方、本実験で用いた基質吸着部位は、ポリエチレンなどの合成高分子材料表面に対する吸着性を示すものの、その頻度は小さく、界面活性剤存在下では大きく減少した。このことから、PHB分解酵素の吸着反応では材料中のエステル結合との相互作用が寄与していると考えられ、バイオポリエステルを認識して特異的に吸着するものと結論づけられた。
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Research Products
(1 results)