Research Abstract |
土壌微生物からホルムアルデヒドを唯一の炭素源として,ホルムアルデヒド資化微生物を単離し,最もホルムアルデヒド資化能力の高いTrichoderma sp.KAIT-M-124株をスクリーニングした。 本菌株を用いると,10g/Lグルコース添加条件で,5日間で培地中の1g/Lのホルムアルデヒドを完全に分解し,ホルムアルデヒドの酸化により生成するギ酸も7日間で完全に分解できることが示された。本菌株は,グルタチオン-NAD^+依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ((1)),新規酵素ホルムアルデヒドオキシダーゼ((2)),NAD^+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼ((3))などを産生することを見出した。本菌株は,培養5日目で酵素活性比が,(1):(2)=181:1であり,(1)の酵素が、主にホルムアルデヒドの代謝に関与していることが示された。また,(2)の酵素によって生成するギ酸は,(3)の酵素によって二酸化炭素にまで酸化されることが明らかになった。本年度は,(2)の酵素が有用ではあるもののグルタチオンやNAD^+を必要とするため,研究の中心とせず,溶液中の溶存酸素のみで反応が進行する新規酵素(2)を中心に研究した。 新規酵素ホルムアルデヒドオキシダーゼ粗酵素液は,T.sp.KAIT-M-124株を,グルコースとホルムアルデヒドを含む培地で,3-L容ジャーファーメンター(30℃,100rpm,3日間)で培養し,菌糸を破砕した後,リン酸緩衝液で抽出することによって得た。本酵素をDEAE-Sepharose, Phenyl-Sepharose, Sephacryl S-300の3段階で精製酵素を取得した。本酵素の分子質量は330kDaで,68kDaのサブユニット5つで構成され,1つのサブユニットに1つの鉄が含まれていることが示唆された。また,本酵素は,最適温度30℃,最適pH8,熱安定性30℃以下,pH安定性pH7〜8であり,ホルムアルデヒドに対する基質特異性が高く,ヘプチルアルデヒド26%(ホルムアルデヒドを100%)以外の他のアルデヒドやアルコールに反応性を示さなかった。本酵素のホルムアルデヒドに対するK_m値は71mMであり,10〜80mMの間で検量線を作製できた。
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