2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘアピンループDNA/RNAを認識するモデルペプチドの速度論的機能評価
Project/Area Number |
16750150
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
川上 純司 甲南大学, 理工学部, 助教授 (40289012)
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Keywords | ナノバイオ / 分子認識 / モデル化 / 熱力学的解析 / 測度論的解析 / ヘアピンループ構造 / インビトロ選択 / 局所的相互作用 |
Research Abstract |
本研究では、複雑な核酸-蛋白質相互作用系を解釈するために、全体から一部分の相互作用を抽出したモデル系の構築とその詳細な解析を目的とした。具体的な方針として、単純化した核酸構造を認識するモデルペプチドと、逆にペプチドを認識する核酸構造という、互いに相補的な情報を提供し得る新規機能性分子の取得を行い、熱力学的・速度論的に解析した。 研究の初年度には、モデル系の核酸側コンポーネントとして、熱力学的に安定な核酸構造を得るための熱力学的パラメータの算出を行った。また、分子認識のアンテナとなり得るアミノ酸側鎖を有する非天然型核酸の合成を行った。二年目となる平成17年度には、熱安定な低分子量核酸コンポーネントとして、塩基性に富む低分子量ペプチドを特異的に認識するヘアピンループRNAをインビトロ選択によって得た。最終年度となる平成18年度には、得られたモデル系において、アミノ酸置換を施したペプチドを種々作製した。置換の影響を熱力学的・速度論的に定量化した結果、1つの局所的な静電的相互作用が及ぼすエネルギー的寄与ΔG°は、25℃において0.7kcal・mol^<-1>程度と算出された。また、静電的相互作用は主として結合過程に寄与し、結合速度定数を決定する結合過程のΔG^≠_<25>は、ΔG°_<25>とほぼ同じ数値であることが分かった。同様に、π-πスタッキングに関しては、エネルギー的寄与がΔG°_<25>にして約1.2kcal・mol^<-1>程度であると算出された。本研究において得られた最も重要な知見は、これらの局所的相互作用の寄与は、エネルギー的に相加性を持つということである(論文準備中)。これらの知見を基にすると、蛋白質が核酸と結合する際のエネルギーは、蛋白質の構成成分であるアミノ酸レベルで決定するといえる。そこで、静電的相互作用,π-πスタッキング,および水素結合が可能なL-ヒスチジンとRNAとの結合を酵素反応を指標に解析したところ、本研究で得られたエネルギー的な解釈が妥当なものであることが示唆された。
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Research Products
(3 results)