2004 Fiscal Year Annual Research Report
含セレン縮合多環芳香族を基盤とした有機半導体トランジスタ材料の創製
Project/Area Number |
16750162
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
瀧宮 和男 広島大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40263735)
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Keywords | 有機電界効果トランジスタ / 縮合多環芳香族 / 有機セレン化合物 / 有機半導体 / キャリア移動度 / 薄膜デバイス |
Research Abstract |
先ず、p型FET材料としてベンゾ[1,2-b:4,5-b]ジセレノフェン系(BDS)化合物の可能性を調査する目的で、2,6-ジフェニル誘導体をはじめとする種々の新規BDS誘導体を合成し、それらのFETデバイスにおける性能を検討した。その結果、フェニル、およびビフェニル誘導体を用いたデバイスでキャリア移動度が0.1cm^2/Vsを超え、かつ高いon/off比(10^5)を持つことを見出し、これらが優れた材料であることが分かった。また、BDS骨格に導入した置換基により、デバイス特性のみならず、安定性も影響を受けることが明らかとなり、例えば2-ナフチル誘導体を用いたデバイスは、大気中、常圧でも安定に動作し、移動度も0.05cm^2/Vs程度と真空下と変わらず、また経時変化も小さいことが明らかとなった。これに加え、新しい含セレン縮合多環芳香族化合物の探索において、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2-b][1]ベンゾセレノフェン(BSBS)骨格に注目し、その合成法を検討した結果、従来、合成の困難であったBSBS系化合物の簡便な合成法を開発することが出来た。この中で合成に成功した2,7-ジフェニル誘導体(DPh-BSBS)を用いてFET素子を作製したところ、移動度は0.3cm^2/Vsを超えon/off比は10^6に達した。さらに、DPh-BSBSの素子は、大気中でも0.2cm^2/Vsを超える移動度を示し、半年以上放置しても性能劣化がないことが明らかになった。このような特性はペンタセンなど他の有機半導体を用いたFETには見られない特徴であり、実用化に向けた検討を含めてその応用を考えていきたい。 一方、n型FET材料として、先のBDS骨格の利用を検討した。すなわち、BDS骨格に種々の強力な電子吸引基を導入し、p型からn型への変換を試みたところ、トリフルオロメチル基の導入により、移動度0.10cm^2/Vs程度のn型材料となることが明らかとなった。
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