2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16760017
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
目黒 和幸 独立行政法人理化学研究所, 表面フォトダイナミクス研究チーム, 研究員 (00360652)
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / ラマン散乱 / 探針増強ラマン分光 / 表面プラズモン / カーボンナノチューブ / 単一分子分光 / 光第二次高調波発生 |
Research Abstract |
昨年度までに構築した極低温STM探針増強ラマン分光システムの調整・改良を行うと共に、Au(111)基板上に分散吸着させた単層カーボン・ナノチューブ(SWNT)のSTM探針増強ラマン分光計測を行った。クロロホルム中にSWNTを超音波分散させた溶液を基板上に滴下した後自然乾燥させて作製した試料を、超高真空中(10^<-11> Torr台)、79Kに冷却した環境下で実験を行った。STM像観察によって孤立したSWNTバンドルを探し出し、その上に探針を固定してSTM探針増強ラマン散乱強度の探針-試料間距離依存性を測定した。励起光は波長785nmのTi : Sapphireレーザー光(試料への入射パワー〜5mW)を用いた。SWNTのG-bandモード(波数〜1590cm^<-1>)のラマン散乱強度が、探針がトンネル領域にある場合に増倍されていることが確認された(リトラクト領域の約2.3倍)。G-bandラマン散乱強度の探針-試料間距離依存性測定の結果では、試料-探針間距離の増加対して単調に減少するだけではなく、一旦減少したあと再び増加してピーク構造を持つ場合があることを発見した。物理的にこのような現象が起こり得るかを検討するために、半無限の試料表面近傍に電気双極子を置き、探針に見立てた曲率半径aの金属球を試料表面との距離dを隔てて設置すると十分遠方で電気双極子が何倍に観測されるかという電磁気学的増強効果の理論計算を行った。この結果、探針の曲率半径が小さい場合には単調な依存性しか現れないが、約500nm以上の大きな曲率半径を持つ探針に対してはピーク構造が現れ得ることがわかった。これは、特定の曲率aと距離dの組み合わせの場合に探針先端と試料表面で閉じこめられた局所表面プラズモンが共鳴励起することに起因するものであると考えられる。
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