2004 Fiscal Year Annual Research Report
レーザートラッピング法による表面増強ラマン散乱発現の制御、最適化
Project/Area Number |
16760042
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 民武 関西学院大学, 理工学研究科, 研究員 (00351742)
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Keywords | 表面プラズモン共鳴 / 表面増強ラマン散乱 / レーザートラッピング法 / 第二高調波 / 近赤外レーザー / ローダミン色素 |
Research Abstract |
銀ナノ粒子の凝集体(銀ナノ凝集体)に分子が吸着することにより生じる表面増強ラマン散乱(SERS)は、その散乱効率が通常のラマン散乱に比べ10^<11>-10^<14>倍増大するため、単一分子分光が可能となる。我々はSERS発現の制御と最適化のため、表面プラズモン共鳴(SPR)が双極子振動を示す小さな銀ナノ凝集体を選択し単一凝集体ずつのSERSとSPRの比較を行うことで、SERSの励起波長依存性、光学異方性などがSPRより決定されることを実験的に解明した。この結果は銀ナノ凝集体のSPRバンドに適した励起波長と偏光を選択することにより、SERS発現を最適化できることを示している。 次に集光レーザー光によるレーザートラッピング法を用い、水中で銀ナノ粒子の凝集を制御し最もSERS発現に適したSPRを有する銀ナノ凝集体を任意に形成を行った。光捕捉を利用するとレーザー集光位置にナノ粒子集合体を作製し、さらにその集合構造や光学特性を制御することが可能である。今回、銀コロイド溶液に光捕捉用の近赤外レーザーを集光した結果、第二高調波(SHG)の発生など幾つかの興味深い現象を見出した。銀コロイド(粒径40〜80nm)はクエン酸還元法により作製した。顕微鏡下で連続発振Nd3+:YAGレーザーの基本波(波長1064nm;強度100mW〜350mW)を100倍の対物レンズにより銀コロイド溶液中に集光した。集光位置からの発光スペクトルを200msごとに40秒間連続測定した。銀コロイド溶液からは鋭い発光スペクトルが得られ、捕捉用レーザーで励起された銀ナノ粒子からのSHGであることが分かった。SHG強度はレーザー強度とともに非線形に増加するが、300mW程度以上では飽和する傾向が見られた。また、銀コロイド溶液中にローダミン色素を添加したところ高強度のSHが40秒間に数回、不連続に発生した。局在プラズモン共鳴に起因する発光や表面増強ラマン散乱に類似したスペクトルも観測されており、現在はこれらを詳細に解析しその帰属を行っている。
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