Research Abstract |
本研究課題の目的は,配送スケジューリング問題に対して,ある一定の精度を保証しつつ,出来るだけ高速な近似アルゴリズムを設計し,また,それが実装の容易性や平均的な性能の観点からも優れているように構成することである.昨年度の「近似」に引き続き,本年度からは「近似の近似」について研究を進めた.当初の計画通り,多様な目的関数を扱うために,これまでのツアータイム最小化やメイクスパン最小化に加えて,仕様搬送車数最小化の検討を開始した.この問題に対しては,近似解法上の近似を検討するのではなく,仕事の分担の仕方をグラフの部分木による分割に置き換えるという,モデリング上の近似というアプローチを採用した.任意のグラフを容量制約のあるいくつかの部分木に分割するとき,ひとつの7倍近似アルゴリズムを示すことが出来た.計算手間は,枝数と節点数の自乗の和のオーダーに抑えられることも分かった.また,各部分木が与えられたグラフの根を含まねばならないときは,あるデータ依存近似比の存在も示すことが出来た. 関連する話題として,部品の配送とは逆の流れも知っておくために,本年度も引き続き,部品の収集を取り扱う組立スケジューリングの問題を考察した.この問題に対しては既に2倍近似アルゴリズムを得ていたが,それを厳密解法に組み込んで計算実験をおこなった.その結果,総機械台数が3の場合,仕事数が400までのランダムに発生した問題例の80%以上を厳密に解くことができた.また,ラインバランシングの立場から仕事の分担の仕方を考察し,精度保証は得られないものの,遺伝的アルゴリズムによって良好な近似解が得られることも計算実験によって確認した.
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