Research Abstract |
1.当初の研究目的および平成16年度の研究実施計画 基本解法(代用電荷法)は偏微分方程式問題の数値解法のひとつであり,計算が簡便であり,かつ,ある条件で高精度を達成するという利点を持つ.本研究の目的は,従来基本解法が苦手とした問題に対し同法を改良して基本解法の可能性の向上を図り,あわせて同法を科学技術計算へ応用するということである.そして,平成16年度の研究実施計画では,周期的境界条件をもつ偏微分方程式問題とくに3次元周期的粘性流(Stokes流)問題に対する基本解法アルゴリズムの改良を構築し,数値実験による有効性の検証および科学技術計算への応用を計画した. 2.平成1年度の研究実績 (1)周期的粘性流問題に対する基本解法 本年度は上記の研究実施計画をふまえ,2次元平面格子上に無限に配列された物体をすぎる3次元Stokes流の問題に対する基本解法の改良を行った.この問題に対しては従来の基本解法,すなわち,単一点電荷による流れ(Stokes源)の重ねあわせによる解の近似は適用が困難であった.これに対し本研究では,Stokes源の代わりに周期的基本解,すなわち,周期的に働く点加重による流れの重ねあわせを近似解に用いる基本解法アルゴリズムを構築した. そして,球列をすぎる流れの問題に対し上記アルゴリズムを適用し,十分な精度で解を与え,かつ,先行研究の計算結果とよく符合することを確かめた.この研究結果は,2004年7月の研究集会"Eleventh International Congress on Computational and Applied Mathematics"(Katholieke大学,ベルギー)にて口頭発表し,同会proceedingsに投稿中である. (2)関連研究業績 関連する研究として,円周境界を含む多重連結領域におけるポテンシャル問題に対する代用電荷法の改良を行った.この研究では,流体力学におけるMilne-Thomsonの円定理を応用して,従来に比べて計算量の少ない代用電荷法を構築し,数値実験により同法の有効性を確かめた.この研究結果は日本応用数理学会2004年度年会などで口頭発表し,論文投稿の準備中である. 3.おわりに 研究実施計画のうち,科学技術計算への応用が達成されずに終わった.これは,翌年度(平成17年度)の研究課題としたい.
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