2004 Fiscal Year Annual Research Report
超高圧水素環境下で使用される金属材料の簡易疲労試験方法の確立と疲労強度特性の解明
Project/Area Number |
16760078
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松永 久生 九州大学, 工学研究院, 講師 (80346816)
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Keywords | 燃料電池システム / 水素 / 金属疲労 / 陰極チャージ法 / ステンレス鋼 / 疲労き裂 |
Research Abstract |
水素利用に関する研究開発が世界各国で活発化する中で,安全な水素利用社会実現のために本研究の重要性は益々高まっている.本研究では,水素陰極チャージを施した試験片を用いて,燃料電池システムへの使用が想定される各種ステンレス鋼の疲労強度に及ぼす水素の影響の解明を試みた.得られた成果・知見を以下に示す. 1.陰極チャージの各パラメータ(チャージ液の種類・濃度・温度,電流密度,チャージ時間)を変化させた場合の試験片中の水素濃度,表面からの水素の侵入深さおよび水素の存在状態を昇温脱離分析(TDA)によって調べた.燃料電池システムへ向けへの使用が想定されているFCC構造を有するオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304,SUS316およびSUS316L)ではBCC構造のフェライト系のステンレス鋼に比べて水素の拡散が桁違いに小さく,水素チャージを2〜4週間施しても水素は材料表面から100μm〜200μm程度しか拡散しないことがわかった.水素チャージを施した材料では,高圧水素ガス中に曝露した場合と同様,トラップエネルギーが小さい拡散性水素が増加することから,陰極チャージによって高圧水素ガスに曝される実機部材の水素固溶状態を再現できているといえる.燃料電池システムの10年を超える長期間安全利用を保証するためのデータの取得には,さらに長期間水素チャージを施した場合のデータを取得する必要がある. 2.得られたチャージ条件により水素チャージを施した試験片を用いて疲労試験を行った.SUS304およびSUS316に水素チャージを施すと,き裂進展寿命が約半分に低下した.一方,SUS316LやSUS405(フェライト系)では水素チャージによるき裂進展の加速は見られなかった.き裂先端における塑性誘起マルテンサイト変態量を破面のX線回折により測定したところ,SUS304>SUS316>SUS316Lの順で大きいことがわかった.マルテンサイト組織を有する材料の疲労強度は水素により大きく低下することが報告されていることから,オーステナイト系ステンレス鋼の水素によるき裂進展の加速には,き裂先端で生じるマルテンサイト変態が大きく関っているといえる.
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