Research Abstract |
本研究の目的は,フェムト秒レーザーを用いて,FEDのエミッタティップを目指した微小電子源をレーザー加工プロセスのみで作製することである.本研究ではレーザーがコンタクトマスクを通過する際の回折現象を利用してレーザー強度分布に強弱を付け,これを金属表面に照射しアブレーションすることによって金属を除去し,1つの開口部内に多数の微細突起物を作製する.この方法で金属表面に微細突起物を作製した例は無く,微小電子源に応用した例も無い.本手法の利点は以下の通りである:1.レーザーのみで作製する,薬品を一切用いない完全ドライプロセスであるため,環境に優しい,2.レーザー発振器は完全固体レーザーであり,また加工中にも毒ガスを発生しないためクリーンなプロセスである,3.工数はレーザー照射プロセスのみである.従って本手法の完全ドライ・クリーンプロセスが達成されると環境汚染の防止に役立ち,また工数を軽減できることから省エネにもなる. 本研究では,照射パルス数,レーザー波長,マスク開口部長さ,タングステン表面とマスクとの距離をパラメーターとして系統的な実験を行い,微細突起物形成の主要因を探した.その結果マスク開口部エッジからの回折が主要因であると考えられたので,実験条件に相当する回折強度パターンを計算し,実験結果と比較した.計算結果は,実験結果と定性的に良く一致した.従って,マスク開口部エッジで回折された強度分布をもったレーザーによるアブレーションによって,マイクロスパイクは形成され配列することがわかった.次年度では,作製されたマイクロスパイクの電子源としての性能を評価する為,電界電子放出電流を測定する予定である.
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