Research Abstract |
昨年度までに,大面積電子ビームのエネルギー密度および照射回数が表面平滑化特性に及ぼす影響を明らかにするとともに,その平滑化のメカニズムについて検討を行った.これらの結果をもとに本年度においては次に示す2つの項目について重点的に検討を行った. 1.電子ビーム照射表面の組織観察,および照射条件と組織の相関 本大面積パルス電子ビーム照射では,試料表面の微細な凸部分に優先的に電子ビームが照射され,その熱エネルギーによって材料が溶融することで平滑化がなされる.従って試料表面には組織の異なる層が形成されていると予測される.それらについてまず,SEMやTEM,光学顕微鏡で観察を行った.その結果,表面には1μm程度の再凝固層が形成されており,母材とは異なる,結晶粒の小さい組織となっていることが確認された. つづいて薄膜X線回折,EDXを用いてその成分,構造を定量的に測定した結果,成分はほとんど変化していないが,組織は異なることが判明した. さらに,照射条件との相関についても検討を行ったところ,電子ビームのエネルギー密度が高くなるほど再凝固層厚さが厚く均一になる傾向があるが,エネルギー密度が高すぎると再表面での材料除去が多くなり,かえって再凝固層さが減少する. 2.電子ビーム照射面の硬度,耐摩耗性の評価 組織変化に伴う表面硬度の変化を計測した結果,表面はわずかに硬度が減少する場合もあった.また,摩擦摩耗試験機を用ったところ,電子ビーム照射を行わない面と比較すると,摩擦係数が減少することが分かった.また,再凝固層厚さが厚く均一な場合に摩耗係数が減少する傾向が見られた. これらの結果をもとに,来年度はさらに,撥水性や耐食性などの表面性状の評価を進めるとともに,実際の膝関節や股関節生体部品をもちいて実用検討を行い,電子線照射による超高能率仕上げ法を確立する.
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