2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16760109
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木之下 博 神戸大学, 工学部, 助手 (50362760)
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Keywords | カーボンナノチューブ薄膜 / マイクロトライボロジー / 高摩擦係数 / アモントン-クーロンの摩擦法則 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブはグラフェンシートを筒にしたユニークな極細チューブ構造(直径が数nm程度,長さが数十μm)を有し、硬さと柔軟性をあわせ持っている.カーボンナノチューブは基板に薄膜状に生成することも可能であり,カーボンナノチューブがスパゲッティ状に絡み合ったものや,基板に垂直配向した形状のものなどが存在する.優れた特性を有するカーボンナノチューブで構成され,その薄膜構造も特異なカーボンナノチューブ薄膜は,従来の薄膜とは異なった性質を有していると考えられる.本研究において、μNレベルでのカーボンナノチューブ薄膜のマイクロトライボロジー特性について調べた。その結果、ニッケルやアルミ表面などで見られる水分子吸着よる凝着力は全く観察されなかった。摩擦力は押付けに比例し、摩擦速度や見かけの接触面に関して影響は受けなかった。これは良く知られている一般的な摩擦法則であるアモントン-クーロンの法則に従っている。しかしながら摩擦力-押付け力の比例関係から摩擦係数を求めてみると、1を超えるたいへん高い値であった。さらにこの摩擦現象を解明するために走査型電子顕微鏡(SEM)内にマイクロトライボロメーターを組み込んだ装置を開発し、摩擦のその場観察を行った。その結果、摩擦係数が1を超える高い値でありながらカーボンナノチューブ薄膜表面は1000回近くの繰返し摩擦にたいして、摩耗が全く観察されなかった。1を超える摩擦係数は超高真空中での清浄金属面同士の高い凝着力によるものや、切削などの掘起しが生じるものなどが知られているが、カーボンナノチューブ薄膜は、凝着力はほとんど観察されず、また掘り起こしも観察されなかった。このようにカーボンナノチューブ薄膜のマイクロトライボロジー特性は従来の摩擦の概念を覆すものであることが、明らかとなった。
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