2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16760144
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 晋 京都大学, 工学研究科, 助手 (40321616)
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Keywords | 乱流 / 混合 / 秩序構造 / 渦 / よどみ点 |
Research Abstract |
分子拡散と比して桁違いに効率のよい乱流による混合の物理機構を、乱流中に普遍的に存在することが知られる秩序渦構造に注目することによって明らかにし、さらにその制御の指針を得ることを目的として研究を遂行した。研究手段としては、乱流場の運動とそれに移流される流体粒子の集合の運動とを同時に直接数値シミュレーションによって数値的に求め、得られた結果の詳細な理論、数値および可視化解析をおこなった。その結果、本年度は以下の結果を得た。 (1)統計的に自己相似的な乱流場において初期に近傍に存在した流体粒子対の運動は、乱流中に自己相似的に存在する秩序渦構造による捕獲と放出によるものと理解することができる。この簡単な描像に基づいて粒子対間隔の確率密度関数が従う方程式を導出すると、これがよく知られたリチャードソンの拡散方程式の一般形を与えることが示された。また、導出された方程式の解析解が数値シミュレーション結果をよく再現することを示した。 (2)流体粒子の運動の軌跡(流跡線)は流れ場が定常であれば流線に一致することに注目することにより、乱流中の流線のトポロジーと粒子拡散との間に成り立つ関係を見出した。このことは乱流混合や拡散を考える上で秩序渦構造だけでなく、それに付随する流線構造を考えることの重要性を示唆する。 (3)初期に直線や平面を構成する流体粒子の集合(流体線、流体面)は、一様乱流中で時間の指数関数でその全長や全面積が増大する。この指数関数的伸長は乱流中の最小スケールの秩序構造渦によるものとして説明するこができるが、実はその伸長率は最小構造渦だけでは決定されないことを示した。これはより大きな渦による畳み込みの効果が無視できないためであることを明らかにした。 以上の結果は、流体力学の専門誌上に公表するとともに、IUTAMシンポジウム、第10回欧州乱流会議などの国際会議において発表を行った。
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