Research Abstract |
振動情報を用いた損傷診断は,振動制御がなされている状態では,推定が難しい.本研究では,片持ちはりを対象として,振動制御がなされた状態で,クラックの位置と深さを推定する一手法を示し,クラックによる固有振動数の変化やモード形状の変化に即座に対応するゲインスケジュールド制御を行った. まず,クラックとその開閉を考慮した片持ちはりの有限要素モデルと,モード打ち切り法による低次元化モデルを求めた.そして,フロベニウスノルムを近似の指標として選ぶ手法を用いて低次元化モデルを変形し,LFT(線形分数変換)表現を求め,ゲインスケジュールド制御系を設計した. そして,有限要素モデルから,クラックの位置,深さと固有振動数の関係を求め,クラック推定実験を行った.実験装置は,はり本体と加振装置からなり,はりにき裂を加工し,はりの根元に圧電素子を,先端に加速度計を設置した.さらに,はり根元にひずみゲージセンサを配置した.クラックはメタルソーにより加工した.はりは長さ,厚さが異なるものを10種類以上用意した.そして,はりを加振した応答を2秒間取得し,フーリエ変換を行うことで固有周波数を求め,クラックの位置,深さを推定した.その結果,クラックの位置がはり根元に近い場合は特に精度の高い推定が行うことが出来ることを示した. さらに,推定されたクラックのパラメータを用いてゲインスケジュールド制御系のスケジューリングを行い,クラックを有する片持ちはりの振動制御実験を行った.ゲインスケジュールド制御系は,クラックの考慮をしていない制御系に比べて,クラックが生じた際の制御性能が高いことから,本研究で提案する推定および制御手法が有効であることを示した.
|