Research Abstract |
近年,自動車内にはカーナビゲーションシステムなどの様々な情報提供装置が導入され,ドライバが運転中に受ける情報量がますます増加する傾向にある.情報機器への視覚的注意および操作による姿勢変化は交通事故につながる危険性があるため,音声コマンドによる機器操作や音声による情報の提供など,音声インタフェースが導入されつつある.また携帯電話の使用による危険性についても研究がなされている.しかし,音声インタフェースに関して,情報内容が運転行動に及ぼす影響については明らかにされていない. そこで本研究では,携帯電話による事故多発に鑑み,ドライバが会話の意味内容によって受けるメンタルワークロードを定量化し,運転行動への影響を明らかにすることを目的とする. まず会話の意味内容によって自動車運転者に生じるメンタルワークロードを,脳波のα波含有率,眼球運動,および脳内血流の酸素含有量などの生体情報の変化により,定量化することを試みた.日常会話や長い文は定量化が困難であり,かつ難易度の影響を受けるため,本研究では短い質問を会話として用いた.意味内容については,ドライバ個人に対して意味のある質問(個人の属性に関することなど)と,意味のない質問(暗算問題など)に大きく分類した.意味内容によるメンタルワークロードの定量化を行い,意味あり質問時は意味無し質問時に比べ,有意にα波が減少し,眼球運動が減少することを明らかにした.また脳内血流量計測により,意味無し質問時の脳内血流量が有意に減少することを示した. さらにメンタルワークロードが運転行動に及ぼす影響を調査し,質問を聞いているときの方が,口答中に比べ,有意に反応時間が遅延することを示した.加えて,生理指標によって定量化したメンタルワークロードの程度が上昇するに従い,反応時間が遅延することを示した.
|