2004 Fiscal Year Annual Research Report
量子ナノ構造中のサブバンド間遷移を利用したテラヘルツ領域光デバイスに関する研究
Project/Area Number |
16760272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関根 徳彦 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10361643)
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Keywords | 半導体超格子 / ブロッホ振動 / ブロッホ利得 / テラヘルツ電磁波 / 量子カスケード構造 / サブバンド間遷移 / 時間分解テラヘルツ分光 / フェムト秒レーザ |
Research Abstract |
今年度は以下の2点について研究をすすめてきた。 [1]半導体超格子中のブロッホ振動電子による利得の直接観測とその発生機構の解明 GaAs/AlGaAs超格子構造について、電気光学(EO)サンプリング法を用いた時間分解テラヘルツ(THz)-EO分光法により、ブロッホ振動の利得の有無について調べた。試料より発生するTHz電磁波が、超格子中を運動するブロッホ振動電子の加速度に対応するため、放射電磁波のフーリエスペクトルがブロッホ振動電子の複素伝導率スペクトルを表すことがわかった。そこで、このスペクトル解析を用いて、伝導率スペクトルの実部が、ブロッホ周波数以下では負になり、それ以上では正になること、すなわちブロッホ周波数以下で外部電磁波に対し利得を有することを、直接的に示すことができた。これにより、30年来議論され続けてきた超格子構造の発振器・増幅器への応用可能性に対する重要な知見を得ることが出来た。 [2]GaAs/AlGaAs系量子カスケードレーザの作製・評価技術の立ち上げ 量子カスケード構造を用いたTHz帯光源に向けて、まず最初にデバイスとして実績のある10μm帯の量子カスケードレーザ(QCL)を作製し、QCLの結晶成長技術、プロセス技術、そして評価技術の立ち上げを行った。着目した材料系は、GaAs/AlGaAs系化合物半導体であり、X線回折法を用いて結晶成長条件の最適化を行った。さらに、最適な性能を発揮されるようプロセスの検討を行った。そして、作製したQCL素子に対する評価系の立ち上げを行った。ここで注意した点は、今後THz帯QCLに移行した際の測定系の整合性であり、その結果、分散系ではなく反射系の光学素子を基本とした測定系を採用した。このような系で評価した結果、レーザ発振を確認することが出来た。発振波長は約8μmと設計値(約9μm)と若干短いものの、閾値電流・発光強度ともに他グループの10μm帯QCLと比較して遜色のない特性を得ることができた。ここで得られた知見をもとに、現在作製が困難とされているTHz帯QCLの実現と高性能化を行ってゆく。
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