Research Abstract |
近年,状態空間表現で記述可能なシステムをあえて冗長なディスクリプタ表現で記述することにより,保守性の少ない多目的ゲインスケジューリングを実現する手法が注目されている.この手法は,これまで状態フィードバックを中心に議論されていたが,最近,出力フィードバックへの拡張が検討されている.出力フィードバックの場合,連立LMIの解をすべて共通に選んでしまうと,制約条件が厳しすぎるため,連立LMIの解を求めることが困難である.本研究では,極領域を拘束したH-infinity出力フィードバック制御において,ディスクリプタ表現に対するLMIと状態空間表現に対するLMIが等価となるための条件を導出し,従来の結果を含むより一般的なパラメトリゼーションを示した.以上の結果は, 川田昌克:冗長なディスクリプタ表現に基づく多目的ゲインスケジューリング,第33回制御理論シンポジウム(計測自動制御学会主催),pp.91-96(2004) において発表した. 一方,LMIを拡大するという観点で同様の設計手法としてDilationアプローチが知られており,両者には何らかの対応関係があると考えられるが,ディスクリプタアプローチの方がLMIの補助変数(LMIの拡大に伴い派生する解)の数が少ないため,両者の対応関係についての議論は十分に行われていない.そこで,本研究では,状態フィードバックによるH-infinity制御問題において,KYP補題に基づく新しいディスクリプタアプローチの結果を示し,Dilationアプローチとの完全な対応関係を見い出した.また,この新しいディスクリプタアプローチの結果が従来のディスクリプタアプローチの結果を包含したものとなっていることを示した.また,同時に,冗長なディスクリプタ表現に基づく多目的ゲインスケジューリングの設計法の有効性を検証するため,アクロボット実験装置の製作を行った.ゲインスケジューリングに関しては,まだシミュレーション段階であるが,シミュレーションでは,固定コントローラよりもゲインスケジューリングの方が非線形性の影響を大幅に軽減できることが確認された.以上の結果は 川田昌克:冗長なDescriptorアプローチとDilationアプローチの関係について,第5回SICE制御部門大会(計測自動制御学会主催),(2005.5.25-27発表予定) で発表予定である.
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