2004 Fiscal Year Annual Research Report
樹木年輪による歴史洪水のピーク水位復元とその洪水頻度分析への応用
Project/Area Number |
16760408
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
庄 建治朗 名古屋工業大学, 工学研究科, 助手 (40283478)
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Keywords | 琵琶湖 / 歴史洪水 / 樹木年輪 / 洪水ピーク水位 / 洪水頻度解析 |
Research Abstract |
琵琶湖岸沿いの地域を踏査し、過去の洪水時に水位上昇による浸水の影響を受けた可能性のある9地区からマツ・ケヤキ・ヒノキなど計23個体の年輪標本を採取した。それぞれ年輪測定器により年輪幅を測定し、琵琶湖で未曾有の大洪水が生起した1896年(明治29)前後の期間に着目し、測定した早材・晩材幅の変動に現れた影響を検討した。その結果、1896年まで遡ることのできたマツ5個体について見ると、うち2個体については翌年の1897年に早材幅が急激に狭くなっており、1個体は1897〜98年の2年分の晩材幅が極端に狭くなっていた。1896年洪水は5月頃から水位が上昇し9月にピーク水位を記録しているため、これらの個体については数ヶ月間の長期に亘る浸水が樹木にダメージを与え、翌年の成長を阻害した可能性が考えられる。他の個体については洪水生起年の前後でこうした明瞭な年輪幅の変動は見られなかったが、これらの個体は比較的水はけの良い砂浜に生育していたことから、浸水による影響が比較的小さかったとも考えられる。しかし、こうじた推測の当否を確かめるためには未だ標本数が不足しており、また本研究の所期の目的である江戸時代の洪水復元が可能となるような200年以上の年輪数をもつ標本が未だほとんど得られていない。次年度も踏査を継続してさらに多数の標本を得るとともに、水準測量により個々の樹木の標高を測定し、年輪幅に残る浸水の影響とその樹木の立地条件との関係についてさらに詳細に検討する必要がある。
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