2006 Fiscal Year Annual Research Report
樹木年輪による歴史洪水のピーク水位復元とその洪水頻度分析への応用
Project/Area Number |
16760408
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
庄 建治朗 名古屋工業大学, 工学研究科, 助手 (40283478)
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Keywords | 琵琶湖 / 歴史洪水 / 樹木年輪 / 洪水ピーク水位 / 洪水頻度解析 |
Research Abstract |
琵琶湖岸沿いの地域を踏査し、過去の洪水時に水位上昇による浸水の影響を受けた可能性のある12地区から、クロマツを中心にケヤキ・ヒノキなどを含め計29個体の年輪標本を採取した。それぞれ年輪測定器により年輪幅を測定し、琵琶湖で未曾有の大洪水が生起した1896年(明治29)前後の期間について測定した早材・晩材幅の変動に現れた影響を検討した。その結果、1896年まで遡ることのできたクロマツ6個体について見ると、うち2個体については翌年の1897年に早材幅が急激に狭くなっており、1個体は1897〜98年の2年分の晩材幅が極端に狭くなっていた。これとは別に1897年のみ年輪幅が狭くなっているものが1個体あった。1896年洪水は5月頃から水位が上昇し9月にピーク水位を記録しているため、これらの個体については数ヶ月間の長期に亘る浸水が樹木にダメージを与え、翌年の成長を阻害した可能性が考えられる。これとは別に、1個体のエノキについて、洪水翌年の1897年に早材の導管径と孔圏幅が異常に小さい「洪水輪(flood ring)」が見られた。特に環孔材について、早材形成期に長期間浸水した場合に浸水期間中形成された導管にこのような異常が見られる事例は、他国の研究に見られるが、このエノキが浸水したのは1896年9月頃であり、このように前年秋の浸水が洪水輪を形成したという事例はこれまでに見られない。今後さらに標本数を増やし、このような洪水輪が早材形成期以外についても洪水履歴を復元する手法となりうるか、検証していく必要がある。
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