2005 Fiscal Year Annual Research Report
微物理過程を考慮した赤土流出モデルの構築と流域スケールへの展開
Project/Area Number |
16760410
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 温 京都大学, 地球環境学堂, 助手 (30293963)
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Keywords | 土壌流出 / 浸食 / 微物理過程 / 微地形 / モデリング |
Research Abstract |
圃場域における土壌流出は、土壌が流亡し生産力が減退するという農業的な問題だけではなく、濁水の発生に伴う環境問題も引き起こしている。たとえば我が国では、沖縄地方において、赤土とよばれる赤黄色の土壌がパイナップル畑などから流出し、珊瑚礁等の水域生態系への悪影響、海水の透明度の低下による海岸部の観光価値の減少などの問題が生じている。 圃場域からの土壌流出を防止・軽減するためには、その物理過程に基づく数値計算モデルを構成し、さまざまな降水に対して土砂流出量を的確に予測すること、また、流出防止対策を組み込んだ形でシミュレーションを実施し、その効果を評価することが基本となると考えられる。昨年度は、表層の微細な起伏による流れや土中への浸透など、雨水挙動の物理過程を詳細に考慮した雨水流動モデルをベースとして、圃場域における土壌流出モデルを開発した。具体的には、平面二次元地表流モデルと鉛直一次元飽和不飽和地中流モデルを結合した雨水流動モデルに土砂移動現象のモデルを組み込み、土壌の浸食と堆積、リル構造の進展などの微物理過程を考慮した土壌流出モデルを開発した。このモデルを用いて、仮想的な圃場域における土壌浸食過程をシミュレートしたところ、雨水が微細な地形の凹凸の影響をうけて流動する様子や、谷部への雨水の集中に伴う浸食過程など、土壌流出過程の微物理過程をよく再現できることが明らかとなった。本年度は、表面流の発生・不発生に大きな影響を与える地中流をより精度よく再現するために、マトリクス流とパイプ流を連成した形で計算するモデルを開発した。このモデルを用いて数値実験を行ない、地中にパイプがあると地下水面が大幅に低下し、表面流が発生しにくくなることを明らかにした。すなわち、表面浸食による土壌流出を精度よく予測するためには、土壌構造を考慮した地中流モデルが重要な意味を持つということを示した。
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Research Products
(1 results)