Research Abstract |
本年度は,マルコフチェイン・モンテカルロ(MCMC)法を用いた時空間計量経済分析手法の理論的展開と,都市解析への適用を主に研究を進めた.具体的には,(1)ベイズ空間計量経済モデル,特にベイズ地理的加重回帰モデルの時空間系列相関モデルへの拡張,(2)地価推計におけるベイズ地理的加重回帰モデルの適用,(3)集計ロジットモデルの時空間計量経済モデルへの拡張とメッシュ統計データ及びパーソントリップデータを用いた居住地選択モデルへの適用,を行った.具体的には,横浜市とバンコク首都圏を対象に分析を行った.提案した手法と従来の手法との比較分析を通じて,時空間的に外れ値や飛び地属性を持つ時空間データ(点データ,面データ)に対して,頑健推定を行える提案手法の有効性を実証的に示せた.これらの成果を,日本都市計画学会,ヨーロッパ都市計画学協会,日本交通政策研究会などの論文で発表した.ベイズ地理的加重回帰モデルを我が国に紹介した最初の取り組みであるとともに,それを時空間系列解析に拡張した最初の研究である. また,来年度の準備としてデータ整備も行った.具体的には,(1)GPS端末を用いた観光動態ログデータの収集,(2)中国でのGenuine Progress Indicator推計のための関連指標の蓄積,及び(3)粒子速度計測法(PTV)による歩行環境評価に向けたビデオ解析を行った. 他方,時間的集計単位と空間的集計単位の問題,境界領域データの取り扱い,空間重み付け行列の扱いについては,理論的な課題が残されている.これらの点についても,来年度の研究課題として付け加えたい.
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