Research Abstract |
雨天時に合流式下水道から放流される未処理下水(CSO)は,下水に由来する様々な健康リスク物質(病原微生物,発ガン物質等)を含有しているため,放流水域における水利用では重大なリスク要因となる。本研究では,阿武隈川流域をフィールドとして, (1)雨天時の未処理下水放流水からの健康リスク物質の検出と定量 (2)合流式下水道システムのモデル化・雨天時の未処理下水の放流量と水質の予測 (3)阿武隈川の流出解析と河川水質のモデル化・水利用にともなう健康リスク評価 について研究を行う。これらの研究項目を通じて,種々なCSO対策シナリオのもとで健康リスクを評価することにより,阿武隈川流域の上下水道システムの最適化を行うことを目的とする。 本年度の主な研究成果を以下にまとめる。 (1)河川水中における病原ウイルスの挙動のモデル化 下水中に常在する病原ウイルスは,雨天時の未処理下水とともに河川へ放流される。放流後のウイルスの挙動(主に日射による不活化)を評価するために,日射と水温,そして懸濁物質の有無をコントロールした実験系で,河川水中でのウイルス(poliovirus 1)濃度の経時変化を調査した。その結果,ウイルスの不活化率は,日光中の紫外線の照射量(積算値)から算出可能であった。不活化速度定数は,水温が高いほど上昇した。また,懸濁物質の存在下では,日射が遮られることで,不活化速度が明らかに低下した。 (2)阿武隈川の流出解析と水道水源の微生物汚染評価 流域の標高と土地利用に関する地理情報をもとに,降水量から河川流量を予測するためのGISモデルを構築した。表流水の流れは,標高差にもとづく地表面勾配と,土地利用別に設定した粗度係数から,Kinetic wave法を用いて解析した。また,流域の下水処理場からの放流水にともなう微生物負荷を考慮することで,水道水源(阿武隈川)における微生物濃度の予測が可能となった。
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