2004 Fiscal Year Annual Research Report
有明海沿岸低平地における都市周辺クリーク地域の居住空間システムとその計画論
Project/Area Number |
16760493
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
後藤 隆太郎 佐賀大学, 理工学部, 助手 (00284612)
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Keywords | 低平地 / 居住地形態 / 空間単位 / 水路 / 集合の仕組み / 生活空間計画 / 有明海沿岸 |
Research Abstract |
本研究では、有明海沿岸低平地における市街地周辺部のクリーク地域を対象とし、居住者が自然的空間をいかに読み込み、いかなる工夫をもって居住空間を実現したのか、また、現状における課題はなにか、土地の条件と居住者の条件との相互関係から、今後の居住環境計画に関する知見を得ることを目的とする。今年度は主として、クリーク地域改変市街地の形成プロセスと空間システムについて、以下などが明らかとなった。 (1)佐賀市の市街地は旧城下町部分を中心として、周囲に順次拡大してきたが、その大部分は既存の田園クリーク地域を取り込みながら進展したものといえる。今回取り上げた高木瀬地区において、クリークや農地などの土地の形態はほとんど変化することなく順次宅地化が進行しており、市街化区域が設定される昭和46年(1971)前後から急速に進められた市街化過程の実態を明らかにすることができた。 (2)このような市街地では、もとにあった土地の形態に対応することで現在の個々の居住単位がつくられており、クリーク等の継承されたかつての空間要素が、新たに市街地が形成される際の空間的な基礎として用いられていると考えることができる。 (3)ここでは、かつてのクリーク集落部において、クリークで囲まれた土地につくられた房型居住地、集落の道に沿ってつられた線型居住地、また、集落周囲のかつての農地につくられている街区型居住地と、かつての土地の形態が異なる空間的特徴をもつ居住単位をもたらしていると見ることができる。 (4)こうした市街地は小規模な居住単位の集積として形成しているといえ、特にクリーク集落部においては多様な変化のある空間をつくりだしている。さらに、この小さな居住単位をつくりだすクリークなどの空間基礎は、現在の生活とは直接的な関係は認めにくく関係が潜在化していることも特徴である。 次年度は、居住単位ごとの社会・生活的な空間特性などを踏まえて、詳細に空間的な課題を検討する必要がある。また、現在もクリーク集落として維持している居住地空間の解明を通して、当地域での居住環境計画について考えたい。
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