2004 Fiscal Year Annual Research Report
都市近郊における長屋門の成立と変容に関する計画学的研究
Project/Area Number |
16760497
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
安武 敦子 東京理科大学, 工学部建築学科, 助手 (60366432)
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Keywords | 長屋門 / 景観 / 伝統 / 民家 / 住宅 / 屋敷 / 継承 / 保全 |
Research Abstract |
1)データベースの作成 文化財リスト、各自治体のHP、文化財修理報告を収集し、長屋門は2004.7現在、国宝1、重要文化財48、都道府県指定文化財・史跡30、登録有形文化財54、市町村指定54、その他38が確認でき、それら225事例を一元化した。一方実地調査で、茨城県美野里町・八郷町の調査で150軒余り、岩手県水沢市で60軒余りの長屋門が確認でき、誌上に載らない物件が相当数あることが推定できた。17年度は、長屋門を取り巻く制度や歴史、データベースをオンライン上で公開したいと考えている。また記録保存として茨城県美野里町の33軒を実測した。 2)長屋門の成立過程の把握 茨城県美野里町における調査から、関東周辺の藩政期に相給地であった地域での長屋門の成立は、近世後期に帰農した武家や一部の農民の名主層に拡がり、近代になって旧名主層や本家筋で建設されたことが明らかとなった。相給地ではない地区をみると、岩手県水沢市では中世から豪族の屋敷構えとして長屋門があったが、近世は伊達藩の下ほとんど建築されず、近代以降に地主を中心に建設されていた。つまり関東周辺部や胆江地方の長屋門の集積は、近代以降に長屋門が格式の象徴として農民層で流布したと考えられる。一方、武家の長屋門が多く残る山口県萩市では周辺の農村部で長屋門が建てられていない。郷土史家は、萩市は近代以降県域の中心が山口市に移動し、長屋門が武家屋敷の残骸として残り、衰退の象徴となったためではないかといい、様式の流行という視点で合致している。 3)長屋門継承の居住者の意向 茨城県美野里町で居住者(所有者)の意向調査(57件)を行った。2件で維持費や老朽化から解体を考えていたが、大半は継承したいと述べている。継承は旧態の保存ではなく建替えも3軒で見られ、形式の継承も是認されている。しかし利用実態をみると、旧来の意味(隠居屋・蔵)を失っているものが相当数あり、空き家・物置化している。景観法や登録文化財制度の活用は維持費の一助になると考えられるが、居住者にまだ馴染みがなく、17年度は制度の啓蒙も含めた研究活動を行いたい。
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