2004 Fiscal Year Annual Research Report
重症心身障害児・者の生活力向上に寄与する環境刺激のあり方に関する研究
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16760506
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Research Institution | Tsukuba College of Technology |
Principal Investigator |
山脇 博紀 国立大学法人筑波技術短期大学, 建築工学科, 助手 (60369311)
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Keywords | 重症心身障害児 / 肢体不自由児施設 / 行動観察調査 / コミュニケーション特性 / 障害児間交流 / 多床室居室 / 共用空間 |
Research Abstract |
障害児童の社会性の発達に寄与すると考えられる「同世代交流」に着目し、重症心身障害児と脳性まひ児が混在する肢体不自由児施設において36名の対象児童を観察調査した。ここで調査対象施設は、建て替えがおこなわれるのに従い(1)小規模生活を実現するためユニット形式とし(2)多床室の規模を小さくし、共用空間を拡充をおこなうという建築・空間的特徴を盛り込んで計画されたもので、調査期間中の平成16年7月に竣工・転居をおこなっている。 調査は、7時から20時までの13時間にわたって10分間隔で児童の居場所と行為についてマップに書き込む行動観察調査をおこなった。調査時期は、転居の前後1ヶ月と3ヶ月の4回とした。 結果として以下のことが判った。(1)8床室や16床室といった大規模居室は遊び空間として機能するため、比較的ADLの高い児童の占有が生じ居室滞在率が非常に高い。結果として食堂やデイコーナーなどの共用空間ではADLの重篤な重症心身障害児が他児との交流を持たずに無為または情動などに陥っている場面が多く観察された。これは、食後などの移動が自立しているかどうかなどの移動におけるADLと共に、口頭での会話が可能かどうかといったコミュニケーションにおけるADLも大きく関与しており、意思伝達に困難を有し受身的な生活に陥っている重症児が交流をおこなううえでの大きな障壁になっているといえる。(2)居室を「個室」と「4床室」へと規模を縮小し、多様な姿勢をとることのできる広いカーペットコーナーを設置するなど共用空間を拡充した建て替え後の施設空間においては、居室滞在率が減少し、共用空間への滞在が多くなった。またこれに伴い、重症児と比較的ADLの高い児童との直接交流も多く観察されるようになり、重症児の無為行為比率が減少した。 これらから、施設内空間を個人領域と共用領域とに区別できる空間作りをおこなった結果、児童の共用空間滞在率が大きく増加し、それに伴って児童間交流が増加することが認められた。すなわち、以上のような空間操作により、社会性の向上に寄与すると考えられる児童における外的環境刺激が向上することがわかった。
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