2006 Fiscal Year Annual Research Report
重症心身障害児・者の生活力向上に寄与する環境刺激のあり方に関する研究
Project/Area Number |
16760506
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
山脇 博紀 筑波技術大学, 産業技術学部, 助教授 (60369311)
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Keywords | 肢体不自由児施設 / 重症心身障害児・者 / 行動観察調査 / 空間のユニット化 / ケア単位の小規模化 / 関わり / 交流 / 自発的行為 |
Research Abstract |
調査対象施設は従来型ホスピタルモデル平面からユニット型平面へと建て替えをおこなった(平成16年7月移転)肢体不自由児施設であり、建替え移転前後において、入所児童の行動観察調査5回(のべ194名の対象児童)と、職員の行動観察調査4回(のべ30名)、「もの」の配置状況調査2回をおこなった。児童の行動観察調査はタイムスタディ調査であり、職員の行動観察調査は勤務時間に対して1分間隔で居場所を行為を記述する方法とした。 結果として以下のことが判った。(1)空間のユニット化によって、児童の居場所が大きく変化し、周縁的空間を含む共用空間での滞在率が74.3%から90.0%へと増加した。また、職員の滞在場所も共用空間での滞在率は49.1%から85.3%へと激増した。これにより、施設空間内の共用空間において児童と職員とが場を共有する時間が増え、コミュニケーションが成立しやすい場となったことがわかる。(2)職員の共用空間への滞在が増加したことにより、行為に自立的な軽度障害児が職員との関わりが増加する一方、重度障害児の動き出しに"気づく"ことが増え、重度障害児の自発的な行為を適時的確にサポートできるように変化した。これは、施設日課による一律介助から児童ひとりひとりの意思に沿った個別ケアに変化したことを意味し、非常に重要な変化である。(3)共用空間に多くの時間を過ごし他児と場を共有することは、児童同士の交流を増加させることがわかった。これにより、児童同士での手伝いや声かけなど、障害程度を超えた交流が多く生まれた。特に重度障害児にとって、同世代児童による"ケアではない関わり"は発達心理的にも好影響が期待されるため、望ましい環境に移行したことを伺わせる結果となった。これらから、空間のユニット化と職員の小規模化により、重度障害児の自立度と職員の居場所・行為・関わり方に大きな変化が見られることがわかった。
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