2005 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア近代における建築保存と都市計画に関する研究
Project/Area Number |
16760514
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横手 義洋 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (10345100)
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Keywords | イタリア / ローマ / ジョヴァンノーニ / 都市保全 / 建築修復 |
Research Abstract |
建築保護行政として重要な役割を果たすのが記念建造物リストの作成であるが、ローマでは市当局によるリスト化の作業が難行していた。本事態の打開は、1890年に「建築愛好家による芸術協会」(以降「芸術協会」と略記)の結成によってはかられた。1908-12年に「芸術協会」が出版した『ローマの記念建造物目録』は、芸術的価値はそれほどないものの、各時代の特徴を表す資料的価値の高い住宅を数多く含んでいた。1870年代までは、こうした建物が修復される際、体系的な作業記録が残されていることはなかった。したがって、これまでの修復の実際を調査する機会になったこと、さらに、今後の建築行為に関して保護意識を高めるきっかけになった点において重要である。とはいうものの、対象となる記念建造物の底辺が広げられたわけだから、調査対象数は爆発的に増加し、なかなか資料化が追いつかないという問題はあった。この困難な作業を乗り切ることができたのは他の組織との連携である。そのひとつ「中世および初期ルネサンスの建築のための実測委員会」はひとまとまりの時代のあらゆる建物を対象としており、こうした資料の蓄積が、建物単体を等級によって格付けする既往の手法とはちがう発想を生むにいたる。すなわち、ひとつひとつは重要度の低い建物であっても、中世および初期ルネサンスの時代の建築群としてひとまとめに保護の対象とする動きである。こうして、建物個別の重要度に関係なくひとつの地区全体を保護する可能性が出てきたのである。のちに都市保全論を展開するグスターヴォ・ジョヴァンノーニはまさにこうした動きの中心にいた。彼によれば、単体では重要度の低い建物の豊富な調査と資料の蓄積によってはじめて建築群としての保存が可能となるのであり、それは単に芸術や歴史にとって重要なだけでなく、衛生や経済問題の解決にもつながるのであった。
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Research Products
(2 results)