Research Abstract |
本研究は,戦前期に日本の委任統治領であった南洋群島において,主として日本人によってなされた建築活動の全容を明らかにしようとするものである。本年度の実績の概要は,以下の通りである。 (1)「ベラウ国立博物館開館50周年記念特別展示-パラオの日本建築文化-」 旧南洋群島内に位置するパラオ共和国の国立博物館は,2005年に開館50周年を迎えて記念事業を行った。その一部として,パラオ共和国に残る当時の建築物を中心として,これまでの研究成果を展示した。会期は,2005年9月30日から翌年3月末までであった。主な展示内容は,それぞれの建築物を紹介したA1版のパネルと復元模型である。この展示のための準備を通じて,これまで判明していなかった新たな事実を多数明らかにできただけではなく,研究成果の現地への還元を行うことができた。なお,この展示準備に関するパラオ訪問の旅費は,国際交流基金の海外展助成事業の援助を受けた。 (2)現地調査 (1)の展示の準備のためにパラオを訪問した際に,あわせて現地調査も行った。同国コロールに現存するものの日本統治時代には用途不明の建築物の実測調査を行ったほか,コロールに残る当時の建築物の残存状況に関する補足調査もあわせて行った。コロールに残る日本統治時代の建築物もしくはその痕跡のほぼ全てを把握できたと考えられる。 (3)資料収集 国内では,国立公文書館,昭和館図書室,九州大学附属図書館,国立国会図書館などを訪問し,旧南洋群島における建築物に関する資料を収集した。また,国外では,これまで長年の懸案事項であったハワイ大学ハミルトン図書館とアメリカ合衆国ワシントンD.C.の議会図書館を訪問することができ,旧南洋群島に関する資料収集を行うことができた。なお,国外で収集した資料については,ほぼ全てがデジタルカメラによって撮影を行ったので,他の研究者の利便性を考慮し,再配布の可能性を検討している。
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