2004 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランスの建築教育におけるデッサンの位置づけに関する研究
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16760523
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
元岡 展久 椙山女学園大学, 生活科学部, 助教授 (60329646)
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Keywords | 18世紀フランス / アカデミー / デッサン / 建築教育 / 設計教育 / 設計課題 / コンクール / 建築家 |
Research Abstract |
本年度は,フランス18世紀の建築アカデミーの教育において,設計競技(コンクール)で描かれた図面を対象に,主としてその描き方がどのように変化していったかについてを調査した。海外での調査のための時間がとれなかったため,基本的には,日本で入手可能な資料,主に出版された図集および既往研究書にもとづく分析をおこなった。一次資料の調査と分析は次年度の作業となる。先達の研究をもとにした対象時期の歴史的状況の把握と,次年度の分析の基礎となる基本データの整理をおこない,次年度の調査の方向性を定めた。 フランス18世紀の建築アカデミーの教育において1720年より始まったいわゆる「コンクール」は,1793年まで引き続き行なわれ,当時を代表する建築家の登竜門として機能してきた。本年度の調査の分析対象としたのは,これらのコンクールで描かれた図面の内,首席,あるいは2等を得た作品である。そのいくつかは作品集等で出版され見ることができる。これらの図面の描かれ方を比較分析し,その手法の変化を観察した。 デッサンに現れた表現方法の変化から読み取れることは,制作の意図が,初期においては建てる技術や建築的寓意の正しい使用を表現するという観点から,後期になるにつれて,新しい建築のイメージを作り上げる創造の観点へと変わっていったという点である。こうした違いは,指導的な建築学校教授であり,また影響力のあった建築家による言説にも現れていた。デッサンの目的が,伝統的に正しい設計図を描くことから,新しい建築のイメージを造り出すことへと変化したのである。 今後は,フランスでの一次資料の調査をもとに,描き方の変化のさらに詳細な分析を行なうとともに,先述したデッサンの表現の違いから,建築家の職能としての領域においても,大きな変化が生じてきたことを具体的に明証したい。
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