2004 Fiscal Year Annual Research Report
EELS分光と量子化学計算によるプロトン導電体の状態分析とその材料設計への応用
Project/Area Number |
16760531
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 一厳 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00372532)
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Keywords | 電子線エネルギー損失分光 / 電子状態計算 / 電子チャネリング / デコンボリューション / 遷移金属元素 / ドーパント / 状態分析 |
Research Abstract |
本研究では,特定の回折条件で生じる電子のチャネリング現象を生かし,サイト選択性のある電子線分光を行い,プロトン伝導体材料における個々のサイトを分析することを最終的な目的としている. このために,まず,モデル的な系において,チャネリング条件下でのEELS測定を行った.測定は,NiAl_2O_4及びMn_3O_4スピネル型化合物について行った.これらは,それぞれAlとMnが異なる2種のサイトに存在する.Al-K殻,Mn-L_<2,3>殻励起端構造をそれぞれのサイトからのシグナルを増強させるチャネリング条件で測定した.スペクトル形状はチャネリング条件で明らかに変化し,それぞれ個々のサイトからのスペクトルが異なることを示唆した.更に,スペクトルを装置分解能関数でデコンボリューションすることで,ピーク構造の違いが明確になった.Al-K端等,通常の励起端近傍構造は第一原理バンド計算等の手法でスペクトルの微細構造までよく再現できることが知られている.本研究においてもそれぞれのサイトに内殻空孔を導入した第一原理計算で,実験結果とよく符合する結果を得た.一方,Mn-L_<2,3>端等の遷移金属のホワイトラインと呼ばれるスペクトルは,3dあるいは4fの電子の多体効果が本質的に重要となり,通常の一電子近似のバンド計算では計算が困難である.これらのスペクトルについては,計算面では,3dあるいは4f軌道のコンフィギュレーションインタラクションを計算する手法が近年報告されている.最近なされたMn_3O_4についての計算結果と本研究で得た実験スペクトルはよく傾向が対応するものであった. 以上より,今後はプロトン伝導体材料に適用し,プロトン伝導体材料にドープされた遷移金属のサイトごとのスペクトルから,それぞれのサイトの価数を分析できるものと考えている. これ以外の副次的な成果以下のものが挙げられる:(1)EELSスペクトルと同様の微細構造をもつX線吸収スペクトルの吸収端を用いてセラミックス固溶体サイアロン中の溶質原子の局所環境を実験と理論計算から詳細に明らかにした.(2)水素雰囲気メカニカルミリングで生成したナノ構造黒鉛中の水素が及ぼす化学結合変化をC-K端EELSスペクトルから調べ,グラファイトシート層間に存在する水素がスペクトル構造に変化を与えることを第一原理分子軌道計算とともに明らかにした.
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Research Products
(2 results)