2005 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界アルカリ金属流体のミクロ構造解明に向けた単結晶モリブデンセルの開発
Project/Area Number |
16760532
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 和博 京都大学, 工学研究科, 助手 (50362447)
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Keywords | アルカリ金属 / 超臨界 / 放射光 / 局所構造 / 金属-非金属転移 / ルビジウム / 回折 / 小角散乱 |
Research Abstract |
本研究は、超臨界アルカリ金属流体のミクロ構造実験を実現するため、反応性の極めて高いアルカリ金属流体試料を安定に保持する試料容器の開発を目指すものである。試料容器には、1700℃、200気圧を超える温度圧力領域での安定性が要求される。アルカリ金属との反応性の低いモリブデンを試料容器の材質として用いた。X線の透過窓には、ノイズの少ない単結晶を用い、結晶方位を制御して、円盤状に切り出し、10μmまで薄膜化する研磨技術を確立した。これまでのセルの各部品の組み立て工程は、高融点ロウ材であるRu-Mo合金粉末を用い、2000℃でのロウ付け溶接処理によるものである。しかしながら、単結晶箔が極めて薄くなってくると、高温の熱処理条件では、単結晶箔にピンホールが生じる。そこで今年度は、電子ビーム溶接を用いた新たな作製工程を確立した。これまで実施したSPring-8における流体ルビジウムのX線回折実験、および流体ルビジウムのX線小角散乱実験に加えて、流体カリウムのX線小角散乱実験を実現することができた。アルカリ金属液体中の価電子は、電子ガス模型がよく成り立つ系である。従って流体の密度を低下させることは、電子ガスを低密度化することに相当する。多体電子理論は、電子ガスが低密度になると圧縮率が負となるという、希薄電子ガスの不安定性を予測する。これまでの流体ルビジウムの結果によれば、まさに電子系の不安定性が予測されている領域で、膨張により平均原子間距離が増大しているにも関わらず、二体相関関数により求められる最近接距離はかえって短くなるという構造の異常が明らかになった。同時に小角散乱強度の増大が生じ、系がミクロな不均質性が生じ始める。流体カリウムの小角散乱実験でも同様な散乱強度の増大が観測され、アルカリ金属流体における構造異常が電子ガス系の相挙動と関連することを強く示唆する結果となった。
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Research Products
(2 results)