2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピネル系強相関電子材料における高温度域での電荷整列現象に関する研究
Project/Area Number |
16760534
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
堀部 陽一 大阪府立大学, 総合科学部, 助手 (80360048)
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Keywords | 透過型電子顕微鏡 / スピネル型強相関電子材料 / ナノ組織 / 電荷整列現象 |
Research Abstract |
本研究では、高温度領域に電荷秩序構造の形成を伴う金属-絶縁体転移を起こすスピネル型強相関材料に注目し、電荷秩序構造およびその構造的安定性、さらにその秩序形成過程と物理的特性との相関について明らかにすることを目的とした。具体的には、約700Kの金属-絶縁体転移点を有するAIV_2O_4をとりあげ、本系での電荷秩序構造の安定性を調べるために、Vサイトの一部をCrやMnなどの他の遷移金属元素で置換し、金属-絶縁体転移および電荷秩序構造に与える影響について透過型電子顕微鏡を用いた研究を行った。 AlV^<2-x>Cr_xO_4(x<0.075)における室温での実空間像中には、長距離的な電荷整列(CO)分域および反位相境界が観察された。これらのナノ組織は、基本的にAlV_2O_4において観察されるものと同様であった。しかしながらCr置換量を増加させたAlV_<2-x>Cr_xO_4x=0.10および0.1125試料では、CO分域の大きさの減少と反位相境界密度の増加が観察された。さらにCr置換量が増加したAlV_<2-x>Cr_xO_4x=0.125試料では、大きさ約10nm程度のCO分域と電荷無秩序(CDO)分域との共存が観察された。これらの結果から、AlV_2O_4試料にCrを置換することにより、初め長距離的であったCO状態が短距離秩序化すること、またCr置換量xが0.125より大きい領域では、短距離秩序を有する電荷整列状態と電荷無秩序状態の共存状態が安定化されることが明らかとなった。一方、これらの試料に対する逆空間像の観察から、CO状態の短距離秩序化に伴い、<100>^*方向に伸びた特徴的な散漫散乱の出現および強度の増加が見出された。これらのことから、本系でのCO状態の短距離秩序化は、Cr置換による局所構造の変化が原因であると推測される。
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