2004 Fiscal Year Annual Research Report
応力場と電場が同時に印加されたときのイオン伝導体における輸送現象
Project/Area Number |
16760548
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
近藤 淳哉 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (30301211)
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Keywords | イオン伝導体 / 力学緩和 / 誘電緩和 / 緩和時間 / フォトルミネッサンス / 応力場 / 電場 / ブリルアン散乱 |
Research Abstract |
イオン伝導とは、異方性が高く、相互に関係のある力学的な歪みと電気的な歪み(分極)を併せ持つ結晶格子中を(つまり、電場と応力揚が同時に印加された状態で)、電荷を持った点欠陥(酸素イオン空孔)が両場の相互作用を受け、構造緩和を行いながら拡散する複雑な輸送現象であり、これまでに導電率は応力誘起拡散(内部摩擦)の大きさ、つまり格子歪みの異方性が大きいほど大きいことを定性的に明らかにしてきた。 今年度の研究では、酸素分圧が大気圧近くのときに関して多くの知見を得た。まず、これまでに測定した内部摩擦の統計力学的な再解析(緩和時間の連続分布関数を考慮に入れたピーク解析)を行い、平成12年までの奨励研究及び若手研究で報告した結果より更に詳細に10mol%のY_20_3を安定化剤としてドープしたZrO_2(10YSZ)の時効前後の欠陥構造が明らかになった。2種類の点欠陥対があり、その一つは時効前後ともtrigonal対称性を持つ酸素イオン空孔とドーパントカチオン(Y^<3+>)の欠陥対によるものであるが、時効前は、第一近接なのに対して、時効後は第四近接である。もう一つはドーパントカチオンニつからなる欠陥対であり、時効前は[110]orthorhombic対称であり時効後はtrigonal対称(酸素イオンを二つ挟む)に変化することが分かった。 また、すべての弾性定数の決定により、時効により格子歪みの異方性(弾性率の緩和)が低下するだけではなく、時効による体積弾性率の低下、つまり体積縮小による格子歪みそのものの緩和や、弾性定数の異方性の緩和に伴う時効硬化が起こっていること、弾性特性にはY^<3+>の位置は影響を及ぼさないことが明らかになった。 更に、時効に伴う導電率の低下が、点欠陥の再配列によるものであることをフォトルミネッサンス挙動から再確認した。
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