2005 Fiscal Year Annual Research Report
鋳造速度2倍を可能にする鋼の高速連続鋳造用モールドフラックスの開発
Project/Area Number |
16760597
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 玄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (70361780)
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Keywords | 鋼の高速鋳造 / モールドフラックス / cuspidine / 結晶化 |
Research Abstract |
連続鋳造用モールドフラックスの基本的な系であるCaO-SiO_2-CaF_2系ガラスにLi_2O,Na_2O,K_2Oのアルカリ金属酸化物を添加した際のcuspidineの結晶析出挙動への影響を評価した。アルカリ金属酸化物の添加により,結晶化速度ならびに析出量の増加が確認された。アルカリ金属酸化物の添加によりスラグの融点が低下し,、ガラス内での物質移動が低温においても容易になることと,アルカリ金属酸化物が,シリケートの流動単位を細分化することにより流動性を向上させた結果であることがわかった。その効果の大きさは,熱的な活性度の問題ではLi_2O^Na_2O>K_2Oであり,粘性に与える影響としてはLi_2O>Na_2^~OK_2Oであった。両者を併せるとLi_2O>Na_2O>K_2Oである。しかしながら過剰な添加はアルカリ金属酸化物の活量の上昇を引き起こし,スラグ中のFの配位状態に影響を及ぼしcuspidineの析出量を低下させる。融点・粘性の低下はアルカリ金属イオンの種類に拠らないので,複数の酸化物を同時に添加して活量の上昇を押さえることで,物質移動を促進しつつcuspidineの結晶析出量を上昇させることができる。 また^<19>F固体NMRを用いてCaO-SiO_2-CaF_2系ガラスのF周辺の局所構造解析を行うことにより,モールドフラックスに使用される組成域におけるFの役割を明らかにした。MAS-NMR法によるケミカルシフト測定の結果,Fの周囲には4つ程度のCaが配位しており,2次モーメントの測定ならびに多量子NMR測定の結果,Fはスラグ中において5-10個程度のクラスタを形成していることがわかった。配位数ならびにFのクラスタ形成の結果から導かれる構造モデルとして,スラグ中においてCaF_2結晶に近い存在形態として存在していると考えられる。よってCaF_2添加による急激な粘度の低下に関する説明はSi-F形成によるネットワークの切断による細分化ではなく,CaF_2添加による希釈の結果と考えられる。
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