2005 Fiscal Year Annual Research Report
バイオフィルム形成および機能解析のためのマイクロデバイスの開発
Project/Area Number |
16760629
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮永 一彦 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助手 (40323810)
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Keywords | バイオフィルム / 炭素鋼 / カソード防食 / 静電的反発力 / 微小pH電極 / pH上昇 |
Research Abstract |
化学プラントにおいて多く使用される炭素鋼材へのバイオフィルムの付着は,微生物腐食を引き起こすためその防食方法の開発が望まれている。これまで,炭素鋼の防食技術としてカソード防食方法が行われてきたが,その電気化学反応が微生物に与える影響を詳しく調べた報告はほとんどない。そこで本研究では,緑膿菌Pseudomonas aeruginosa PAO1をモデル微生物として用い,炭素鋼表面への微生物付着およびバイオフィルム内の菌体に対するカソード防食の影響について調べた。まず菌体間の静電的反発力を変化させるため,陰イオン界面活性剤であるSDSを細胞毒性のない濃度範囲で変化させ,蛍光染色法により付着菌体数をそれぞれ測定した。SDS濃度が上昇するにつれ付着菌体数が減少した。さらに,カソード防食の付着抑制に対する影響を調べたところ,イオン強度が低い条件,高い条件で防食を行わない場合と比べてそれぞれ約60%,約30%の付着菌体数の減少が見られた。これらの結果より,静電的反発力の上昇が炭素鋼への微生物膜の初期付着を抑制する一因となっていることが示唆された。 また,ガラスキャピラリーを用いて先端約10μmの微小pH電極を作製した。炭素鋼上に緑膿菌を含む5mm厚の0.5%寒天人工バイオフィルムを作製し,pH分布を微小pH電極によって測定した。カソード防食開始後およそ5時間でフィルム内の99%がpH9以上となっており,pH分布は水酸化物イオンの拡散係数を用いて算出したフィルム内のpH分布とよく一致した。さらに,P.aeruginosa PAO1はpH9以上の培養条件で菌体数が減少したこと,防食後のバイオフィルム内の菌体数が防食前の初期菌体数の約1/100になっていたことから,カソード防食によりバイオフィルム内pHが上昇し,フィルム内の微生物の増殖を抑制していることが示唆された。
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